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2011年3月19日 (土)

あれあれ詐欺

発音が変化して生き残る外来語もあれば、死語になることばもあるようです。「レコード」そのものがなくなって、「レコード屋」という呼び名もなくなり、「CDショップ」に変わったようですが、CDも時代遅れになりつつあります。そのくせ「レコード大賞」ということばが残っているのは変だなあ。ひょっとして、江戸が東京になっても江戸川は名前が変わらないというのと同じ原理でしょうか。でも、時代が変われば、「なぜ『レコード大賞』と言うのだ、『レコード』ってどういう意味?」と思う人も出てくるでしょう。

ポストのマークの「〒」は郵政省(これさえ死語?)の前身だった「逓信省(ていしんしょう)」の頭文字の「て」をカタカナにして、それを図案化したものです。でも、そんな知識、クイズでしか役に立ちません。「髪結い」が「床屋」に変わり、「散髪屋」になり「理髪店」、さらには「理容室」に変わりました。次は何かなあ。カタカナの「バーバー」は定着しなかったのですが、やはりカタカナの「ヘアーサロン」というのも、なんだかなあ。「どこに行くの」おかあちゃんに言われて、「うん、ヘアーサロン」という会話は、大阪の下町には似合いまへん。

でも、呼び名が変わるとイメージも変わります。「暴走族」を迫力のない「珍走団」に変えたら、という意見は一理あります。「ウェイトレス」や「ウェイター」が「ホールスタッフ」になった瞬間、急にえらい役職についた感じがします。「出前」と「デリバリー」はちがうのでしょうか。ピザを注文するときに「出前、お願いしまっさ」と言うと電話の向こうで笑われます。「携帯電話」がいつのまにか「ケータイ」になりました。「携帯」つまりポータブルであることしか言っていないわけで、実体を表すことばがないのですが、じつはナイスネーミングかもしれません。ケータイは、電話だけではなく、まったく別の機能がいくつもついています。メール、インターネット、アラーム、電卓、カメラ、スケジュール帳、音楽、テレビ、サイフ……。アフリカなどでは懐中電灯として利用することも多いそうです。(私としては、あとはマッサージ器、ひげそり、扇風機、タケコプターとして使えればいいなと思いますし、欲を言えば冷房装置、風呂、寝袋、携帯燃料、トイレとして使えれば言うことなしですね。ここまで来れば、もう電話として使えなくてもいいです。)ということで、すべての機能がポータブルになったものとしてカタカナの「ケータイ」という呼び名がぴったりです。

もちろん、なじめないことばもあります。洋服関係のことばっていやですね。「ファッション」という言い方そのものがうさんくさいのに、「ズボン」のことをいつのまにかパンツに変えやがって、しかも「ふらっと系」。わしらにとって「パンツ」は平坦なものではなく、「パ」に力のはいる西洋猿股のことです。いつのまにか、「チョッキ」も「バンド」もなくなりました。「ジャンパー」は「革ジャン」の形では生き残っているのかな。これも古くは「パ」ではなくて「バ」、すなわち「ジャンバー」でしたな。「ズック」も「スニーカー」と言うそうな。「リュック」や「ナップザック」はなくなったのでしょうか。「チャック」も「ホッチキス」は商品名だったので言いかえになったのでしょう。

正当な理由があっての改名はやむをえないでしょうね。「ナショナル」が英語圏の国ではまずいので「パナソニック」に変えたり、「カルピス」が「牛のおしっこ」という意味にとられるので「カルピコ」に変えたりなどというのは、許せます。「英知大学」が名前を変えたのも、「なるほど」です。「近畿大学」も英語表記になると「スケベ大学」という意味になるので困っているという話も聞いたことがあります。国鉄が民営化にともなって名前を変えたのも当然ですが、「JR」というのは評判が悪かった。でも、それが名前なら、そう呼ぶしかありません。後期高齢者うんぬんというのは、その呼び名があまりにも不評だったので変わったようですが、JRはいちおう定着しました。いまだにJRを国鉄と言う人はいるのでしょうか。二十年以上たっても国鉄と言いつづけている人は何か信念のようなものを持っているのかもしれません。さすがに「省線」と言っている人は、最近ではいなくなったようですが。

落語家が襲名などで名前を変えても、しばらくは前の名前の印象が強くて、なかなか新しい名前になじめません。死んだ枝雀さんでも、思い出すときに小米という昔の名前のほうが先にくるときがあります。ざこばも朝丸だし、南光もべかこでインプットされてしまっています。「くりぃむしちゅー」の名前が思い出せずに「海砂利水魚」と言ってしまって通じなかったこともありました。たしか、「さまあ~ず」も「バカルディ」だったのが、二組ともウッチャンナンチャンの番組で強制的に変えさせられたのではなかったっけ。「おさる」が「モンキッキー」に変わったのは大笑いでした。なんとか数子という、占いをするらしいおばさんに変えさせられたのでした。変えなければ売れないと言われたのですが、変えても売れていません。

それでも、こういうのは名前が変わったということを知っているだけマシで、中にはいつのまにか変わっていて、えっと思うこともあります。縄文式土器はいつから縄文土器に変わったのでしょうか。銀行も勝手に合併して勝手に名前を変えてしまいます。そんなまぬけな名前の銀行に金を預けた覚えはないのになあ。いちばんむかつくのは、好みの作家の初めて見る題名の文庫を買って読んでいて、「 あれあれっ」と思うときです。「これ読んだことがある」と思って解説を見ると、別の文庫で出ていた「××」を改題したものです、という断りが書いてある。思わず「金返せ」と叫びたくなります。これはれっきとした詐欺だと思うのですが、如何なものか。

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