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2011年7月 7日 (木)

参ったなピコピコ

テレビから現物がコンコロリと出てくるためには、物質転送装置のようなものが必要になってきます。配送センターが商品を電線にぶらさげるという原始的な方法ではなく、物体を原子か分子かわかりませんが、そのレベルにまで分解したものを電送し、再び組み立てるとかいうようなシステムでしょうか。ただ、その際にハエがまぎれこんだりすると、「ハエ男の恐怖」というような大事件になってしまいます。人体実験で人間の体を送ろうとしたときに、装置内にハエがいたため、融合するときにハエと人間が合体してしまう、という映画がありました。リメイク版で主演したおっさんは「ジュラシックパーク」や「インデペンデンスデイ」でも変な科学者の役で出ていました。

超能力の「テレポート」というのも、原理的には同じなのでしょうか。テレポートするたんびにハエ男や蜂人間、モスキートマンになると困ります。スパイダーマンはどうして蜘蛛男になったのでしたっけ。ネズミ男ははじめからですかね。タイムスリップもののドラマ・小説が相変わらず安易につくられつづけていますが、別の時間で出現したところが海や壁の中ということにならないのが不思議です。たとえば十三教室でタイムマシンに乗って、二千年ぐらい昔に旅行したとしたら、そのころは十三のあたりは海だったでしょうから、そのままおぼれてしまうのでは? まあ、タイムマシンは親殺しのパラドックスが起こるぐらいで、過去にもどることは無理なのでしょう。透明人間なんてのも、「科学的」に考えると、透明になった瞬間、相手から見えなくなるだけでなく、自分も外部を見ることができなくなるとか。第一、透明になるのは体だけでしょ。たとえば胃にはいっているものは透明にはならないわけで、空中に消化中の食べ物が浮かんでいることになりますし、さらにそのあとのことを考えると、食べ物に下に浮かんでいるのは……。ということで、こういうのは「トンデモ科学」というやつですね。

超能力というのも、どうなれば「超」なのか、よくわかりません。さわってもいないのに物体を動かすとか、未来を予知するとか、一般に不可能とされることができるのが超能力なのでしょうが、エスパー伊東のレベルはどうなのでしょう。「高速1分間梅干し30個食い」は物理的には可能なのでしょう。「ジョッキのビール3杯一気飲み、そのあと30回転しても目が回らない」という技は体質でかたづきそうです。「小指1本突きダンボール穴あけ」は空手をやる人ならできそうだし、たこ焼きを指でひっくり返す「高熱たこ焼き、串いらず」はプロの職人ならできる人がいるかもしれません。ばかばかしいからやらないだけのものは「不可能」とは言えないのでしょう。ちなみに、「不可能を可能にする男」というのはよくいますが、国語科のKリハラ先生は、昔よく「可能を不可能にする男」と呼ばれていました。あれも一種の超能力なのかなあ。

算数オリンピックでメダルをとれるような人は、ふつうの人にはない能力をもっているのですが、超能力とは言えないのですね。妙に記憶力がいい人もいます。アスペルガー症候群の人が抜群の記憶力を持っていることがあるそうですが、これは明らかに「能力」でしょう。ただ、これも「記憶術」というのがあるぐらいなので、訓練によって伸びるものでもあり、不可能なことをしているわけではありません。これもやはり超能力とは言えないのでしょう。1分間に2万字以上読める「速読術」なんて、もはや超能力と言いたいのですが、「術」つまりテクニックらしいのです。

たしかに記憶なんて、たとえば語呂合わせでたくさん覚えている人がいますが、そう考えると超能力でもなんでもないですね。「イイクニつくろう鎌倉幕府」で1192年、というのはだれでもやっていることです。ただ、中にはまぬけな人がいて、テストのときに「いいくにツクロウ鎌倉幕府」だと思い違いして2960年と答えたり、「ヨイクニつくろう」と思って4192年と答えたりして、頼朝をタイムスリップさせて未来人にしてしまう人もいます。こうなったら「超能力」と呼びたいものです。

高校の時の日本史の先生が妙な覚え方を教えてくれました。幕末の「池田屋事件」「寺田屋事件」で池田屋という旅館は京都の町中の三条にあり、寺田屋は伏見にあります。池田屋だから池のそばかなと思うと実は寺のあるような町中にあり、寺田屋は寺のある町中にあるのかと思うと、あにはからんや水のある伏見にある、と覚えろというのですが、ひねくれた覚え方もあったものです。六月の異名が「水無月」というのも、六月は梅雨だから水がありそうだけど水がないと思って「水無月」と覚えろ、という意味不明の覚え方と同じです。

意味不明といえば「キロキロとヘクト出かけたメートルが弟子に追われてせんちミリミリ」というのがありました。基本単位「メートル」の10倍がデカ、100倍がヘクト、1000倍がキロ、逆に10分の1がデシ、100分の1がセンチ、1000分の1がミリ、これらを無理矢理おしこんで、「きょろきょろしながら、ひょいと出かけたメートルさんがなぜか弟子に追いかけられて、せんち(「せっちん」つまりトイレ)にかけこんで、なぜか○○○をミリミリと出しました」という意味不明の覚え方です。これぐらいの単位なら、このことばを覚える前に覚えられるような気もしますが、最近はキロの上のメガやその上のギガもよく使われますし、1テラバイトのように「テラ」を見ることもあります。下のほうはマイクロは当然のこと、その下のナノやらピコやら、ふざけとんのかと言いたくなるような単位も出てきました。これらを込みにして新しい覚え方を作ってくれる人はいないものでしょうか。

……と思ってネットで調べてみたら、世の中にはひまな人がいます。作っているのですな。「てきめがけ、ヘクト出かけたメートルが弟子に追われてせんちミリミリ、参ったなピコピコ」……って、これ、うーん参ったなピコピコ……ふざけとんのか!

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