« ふつう の考察 | メイン | 体重② »

2012年2月18日 (土)

体重①

冬は太りやすい! と私は思う!

冬は寒くて基礎代謝に必要な熱量が増大するからダイエットに良いなどというたわごとを聞いたことがありますが、私の経験では秋から冬にかけては明らかに肥えやすい!

 これはおそらく「冬ごもり」だと思います。「食欲の秋」などという怖ろしい言葉がありますが、確かに秋になるとむやみに腹が減ります。寒さが厳しく食料の少ない冬に備えて体が脂肪の備蓄を増やそうとしているからなんです、きっと。そしてこの傾向が、寒いあいだずっと続くんだと思います。だからふとってしまう。

 塾講師ならではの問題というのもあります。1月の受験シーズンは生活が不規則になりやすく、睡眠不足が続くため、食欲のリミッターがあっさり壊れてしまうんです。子どもたちの第1志望校・第2志望校の受験前日に電話かけをしますが(「おやすみコール」と呼んでいます)、実はあの電話をしているあいだもずっとおやつをつまみ食いしたりしているわけです(しゃべりながら食べているわけでありませんが)。
 そんなわけで入試が終わる頃にはめっきり体重が増えていたりします。

 思えば、私がはじめて太りはじめたのも冬でした。高校2年のときでした。忘れもしない期末テスト直後の休み、一週間で4キロ太ってしまったんです。たしか61キロ→65キロだったかな。そのときは事態の深刻さに気づかず、人間ふとればふとるもんだなアハハと笑っていたんですが、高校3年になって恐ろしいことに体育の授業で柔道をやることになっちゃったんです。デスラー総統に似た体育の先生が、「重量級・中量級・軽量級の三階級に分けて、階級別に総当たり戦をやる」などと意味不明のことを言い出しちゃって。たしか66キロ以上が重量級で、野球部とか剣道部とか陸上部とかの猛獣のような輩がうようよいるんです。そのころしばらく体重を量っていなかったんですが、明らかに昨年の冬よりもふとってましたから、このままではまちがいなく重量級行きなんだけど、私は身体訓練をまったくしない怠惰な演劇部員ゆえ、そんなことになったら身がもたないよと。少しでも体重を軽くするため、柔道着をぬいで体重計にのろうとしたら、デスラー総統に「西川、ずるをするな」と言われ、泣く泣く柔道着を手にはかりにのりました。すでに66キロなんて余裕で突破してましたね。

 いや~投げとばされた投げとばされた。野球部のY君ていうのが強かったですねえ。組んだ瞬間ふわっとからだがういて、きれいにひっくり返されたんですが、一瞬何が起こったかわかりませんでした。ぼんやりしていたら、デスラー総統が上から僕をのぞきこみ、にやりと笑って「いっぽん」。強引な投げじゃないところが、Y君の運動神経の良さを物語っていました。一方陸上部のなんとかってやつはやたらと足払いをかけてくるんですが、あまりうまくない。うまくないので、単に蹴られているのと同じでひたすら痛い。アントニオ猪木の「アリ・キック」と同じです。

 アリ・キックはご存じでしょうか。アントニオ猪木が「異種格闘技戦」と称してプロレスラー以外の格闘家とたたかった一連のシリーズがあるんですが、モハメド・アリという伝説的に強かったボクサーとたたかったときに、アリのパンチをくらわないようにひたすらねそべってアリの足を蹴りまくったんです。それが「アリ・キック」です。

 アリ・キックといえば、中学生のときにY本くんというアントニオ猪木ファンがいました。不良というほどではないですが、どちらかというと、スポーツマンでも勉強家でもなく、若干グレた感じの少年でした。根は悪いやつじゃなかったですけどね。ただ、この人が、突然アントニオ猪木になりきってしまうという悪い病気をもっていてですね、まさに猪木の霊が憑依したかのように、不意にビンタをかまして挑発してくるのです(猪木が対戦相手のプロレスラーを挑発するのによくビンタしてました)。しかしですね、挑発されても困るんですよ。僕はべつにY本くんとたたかいたくないわけです。ていうか、今の今まで平和におしゃべりしていたはずなんです。けれども、いったん猪木の霊がのりうつったY本くんには言葉は通じず、僕が挑発にのらないとみるや、今度はアリ・キックです。ほんと迷惑でした。

 1度だけキレて、やり返しました。ビンタを。それでY本くんはすっかり燃える闘魂と化し、さらなるアントニオ猪木の必殺技「卍固め」を僕に決めようとしてくるんですが、あの技はですね、はっきり言ってしまうと、敵が協力してくれないと決められない技なんですよ~。Y本くんは完全にキレてしまって「西川、腰を落として左手を出せ」「いやだよ~」「文句言うなボケ」などという白熱しない戦いが繰り広げられました。

 さて、そんなある日、そんなY本君が、恋をしてしまいました。タリラリ~(『ある愛の詩』より)。

 相手は同じクラスのN田さんという、小柄で色白のかわいい女の子です。しかし、中学生の初恋ですし、アントニオ猪木がのりうつっていないときのY本君はシャイなナイスガイですから、打ち明けることもできません。切々とした恋心を聞かされた悪魔のような私は、(今こそビンタとアリ・キックと卍固めの恨みを晴らすとき!)と思ったわけでもありませんが、「Yっさん、ここはひとつ思いきって打ち明けるべきだぜ、愛とは決して後悔しないことだしさ、だいじょうぶ、Yっさんならいけるって」と何の根拠もないことをぺらぺらと吹いてそそのかし、Y本君もすっかりその気に。

 その後Y本君はN田さんをどこかに呼び出して愛の告白をしたらしいですが、残念ながら不調に終わりました。Y本君はその悲しい顛末を、親身になって相談に乗ってくれたと信じている悪魔のような私に涙ながらに語ってくれましたが、私の顔がだんだんにやけてくるのを見て、またしてもアントニオ猪木に変身してしまうのでありました。

「体重②」につづく。

このブログについて

  • 希学園国語科講師によるブログです。
  • このブログの主な投稿者
    無題ドキュメント
    【名前】 西川 和人(国語科主管)
    【趣味】 なし

    【名前】 矢原 宏昭
    【趣味】 検討中

    【名前】 山下 正明
    【趣味】 読書

    【名前】 栗原 宣弘
    【趣味】 将棋

リンク