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2012年3月10日 (土)

体重③

私の体重とは何のかかわりもないことながら、ギリシャのアンゲロプロス監督が亡くなりました。

野球の監督ではありません。映画監督です。

日本で公開された映画のなかではたぶん『霧の中の風景』がいちばん有名ではないかと思います。姉と弟が父をさがしに出かける話です。私は大学のときに仙台の映画館で観ました。あの頃はまだ東京以外でも良い映画がかかっていて、吹田のぼろい映画館でアンゲロプロス特集を観たりできたんですが、今はひどいことになった、ような気がします。東京はきっと良い映画をやってるんだろうなあなんてひがんだりしていますが、もしかすると、映画に関する日本人全体の文化水準が激しく低下しているのかもしれないぞと考えるときもあります。

なんだ、おまえの好きな映画が上映されてなかったら文化水準が低いことになるのか、と批判されるかもしれませんが、あえて

「そのとおりだ!」

と言いたい! 言いたいけど、やっぱり言わないでおくか! 失礼だし! でも書いてしまった以上、もう遅いか!

注 上記『霧の中の風景』はとても良い映画ですが、小学生にはまったくおすすめしません。

◇◆◇

さて、体重の話です。大学に入っていきなりすごい勢いで痩せたという話を「体重②」で書いたかと思います。かなり不健康な痩せ方だったので強烈なリバウンドが来そうなんですが、それが来なかったのは、大学生活を通じてずっとろくにものを食べなかったためです。

すぐに食費をけちるのは高校生の頃からの悪い癖ですね。母親がたまに弁当をつくれなくて「これで何か買って食べなさい」と500円渡してくれたりするともうウハウハです。当然何も食べずにそのお金で本を買っちゃいます。

高校一年生のときに、ユースホステルや親戚の家に泊まったり夜行列車を利用したりして北海道を2週間ほど旅行したんですが、このときもほんとに食べませんでした。親戚の家ではジンギスカンやら夕張メロンなどというものをたらふく食べさせてくれるので、そこでひたすら食いだめをして、あとはほぼ飲まず食わずで過ごしました。帰阪したときには激ヤセしており、親が仰天、かわいそうなおばさんが「ちがうんだ、オレはたくさん食わせたんだぞ、信じられないほどたらふく食わせたんだ」と弁解していました(おばさんは自分のことを「オレ」と言うのであった)。天国のおばさん、ごめんなさい。

そんなわけで、親元を離れて自由の身になった大学時代はだいたい一日一食で過ごしていました。寮にいた頃はほんとうにむちゃをしていて、2~3日パンの耳しか食べないとか、そういうことも頻繁にありましたが、寮を出て、友人たちと一軒家を借りて暮らし始めると、ときどき自炊をするようになりました。

そのころの私の定番は、『親子スパゲティ』です。べつにたいしたものではなくて、タマネギとにんじんと鶏肉と卵をいためてスパゲティとまぜるだけです。味付けは塩コショウです。

財政状態が悪化すると、鶏肉とタマネギとにんじんがなくなり、卵だけになります。いりたまごをスパゲッティにのせただけというやつですね。卵は近所のスーパーでばら売りをしてくれたので、恥をしのんで、一個だけ買いに行ったりしてました。

さらに財政状態が悪化すると、卵も姿を消し、かつおぶしになります。かつおぶしをふりかけて、マヨネーズを落とし、さらに醤油を回しかけて食べるんです。あたたかいうちはなかなかおいしいんですが、冷えるとまずくてねえ。

その頃は「栄養」なんて何の興味もなく、食事というのはとにかく腹がふくれればよいのだと思っていました。野菜とかバランスとか何の話ですか?って感じでした。今じゃ、タンパク質をおよそ何グラム摂取したかまで考えて食事していますが、人間変われば変わるもんですな。

スパゲティはよく食べました。今でも大好きです。これも大学時代の話、いっぺん、『ボンゴレ』ちゅうのを食べてみたいなあと思って、近所の魚屋にあさりを買いに行ったら、季節はずれだったのか、なかったんです。でもどうしても『ボンゴレ』が食べたかったんで、きっとしじみもあさりと似たようなものだろうと判断して、しじみを買って帰ってですね、しじみボンゴレをつくってみたんです。これがしみじみまずくてねえ。とても食べられませんでした。

その手の失敗はいろいろやらかしました。高校生のときに少女漫画にはまってしまってですね、そしたら、少年漫画にはあまり出てこない「シナモンティー」なるものが出てきたりするわけです。「これだ!」と思ってですね、さっそく試してみたんですけどね、その、僕は「シナモン」というのがどういうものかよくわかっていなくてですね、なんとなくそういえば家にそんな感じのものがあったなあという曖昧な記憶でつくろうとしたもんで、シナモンじゃなくてガーリックパウダーを紅茶にぶちこんでしまったんですね。いや、これもまずくてねえ。とても飲めませんでした。

村上春樹の『風の歌を聴け』が僕の高校時代の愛読書だったんですが、鼠という登場人物が、ホットケーキにコーラをかけて食べる、という話が出てくるんです。で、さっそくやってみました。あつあつのホットケーキにコーラをどぼどぼとかけたんですが、すごい勢いでしゅわしゅわ~と泡がたってですね、ホットケーキは冷たくなるわコーラはぬるくなるわで、すごい味でした。まずかったですねえ。

一緒に住んでいた九州出身のYくんは、クリームシチューに焼き海苔入れたりしてましたねえ。カレーに「料理酒だ」とか言ってウォッカをどぼとぼと入れすぎ、真っ赤な顔して食べてましたねえ。愚かな人でした。ま、人のことは言えませんけど。

でもYくんはとても優しいやつでしてね、僕が大学生男子にありがちなとある事情で落ち込んでいたら、焼きおにぎりをつくって部屋に持ってきてくれたりしました。

もうひとりの同居人である I くんだけは淡々とまともなものをつくって食べていました。かれの料理は、つねにタマネギとにんじんを刻むところからはじまります。それを鍋にいれてくつくつ火にかけながら、豚汁をつくるか肉じゃがをつくるかカレーをつくるか考えるって感じですね。毎日飽きずにそれを繰り返していました。なんというか、非常に精神の安定した人物でしたねえ。

以上のような生活のため、仙台で暮らした七年半はそれなりに体重は落ち着いていました。最後の数年は多少おなかがぽっこりしてはいましたが、まだまだ余裕がありました。

ひどいことになったのは、大阪にもどってきてからです。

                                              つづく?

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