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2013年2月12日 (火)

四天王は知ってんのう

プレステと並んで売れていたセガサターンというゲーム機のCMで、姿三四郎をもじって、「せがたさんしろう」と名乗り、「セガサターン、シロ!」とさけぶのを「藤岡弘、」(たしか今は最後に読点をつけて芸名としていたような)がやっていましたが、当時でさえ、もとネタを知らない人が多かったのだろうな…と言いつつ、さりげなく続けていきます。

頼光四天王と言えば、「渡辺綱・碓井貞光・卜部季武・坂田公時」で、結構有名です。羅生門の酒呑童子を退治しにいったメンバーですな。渡辺綱は源氏の中でも一字名乗りなので嵯峨源氏、源融の子孫になります。源融は光源氏のモデルの一人とも言われる人で、梅田の太融寺は融ゆかりのお寺だそうですな。綱は羅生門だけでなく、一条戻り橋で鬼の腕を切り落としたとも言われています。そのときの刀が罪人を試し切りしたときに髭まで切れたことから名付けられたという「髭切」です。鬼はそのあと乳母の姿に化けて腕を取り戻しにくるという、有名な話です。相続税が払えないために取り壊しにするとかしないとかで、三国の渡辺邸が去年話題になっていましたが、渡辺綱の子孫の屋敷です。天正十年に死んだ人が建てたとか言っていましたから、信長が死んだ年ですね。大阪落城よりずっと前からあったという、すごい家が結局取り壊されてしまいました。

渡辺綱は「わたなべつな」ではなく、「わたなべのつな」と読みますが、「渡辺」はいわゆる「姓」ではなく、名字なので「の」ははいらないはずです。「源義経」は姓なので「みなもとの」ですし、「平清盛」も「たいらの」です。でも、「足利尊氏」は「あしかがの」ではないし、「徳川家康」も「とくがわの」にはならない。この時代には、まだ名字というほどの感覚はなく、「渡辺の住人」ぐらいの意味だったのでしょうね。今年の洛南入試の集合場所は六孫王神社でした。「六孫王」というのは、源経基のことで、清和天皇の六番目の子貞純親王の息子であり、天皇の孫であるということで、そう呼ばれました。その子が源満仲で、多田満仲とも言います。「ただのみつなか」という人もいますが、私は「ただのまんじゅう」という呼び方が好きです。なにか連想が働いて、いい感じなので。これも川西の多田の住人ということでしょう。でも、碓井貞光は「うすい・さだみつ」、卜部季武は「うらべの・すえたけ」と読みたいので、「の」がはいるかどうかは単なる口調かもしれません。鹿ケ谷の事件で平清盛に密告した多田行綱は満仲の子孫ですが、「ただゆきつな」と読むのが普通です。この時代には名字になっているのでしょうね。でも、これも「多田蔵人行綱」と言うときには「ただのくろうどゆきつな」になりそうな。時代が下がっても、清水次郎長が「しみずのじろちょう」になるのは、明らかに「清水の住人」ですね。豊臣秀吉は「豊臣」という「姓」なので、「とよとみのひでよし」が正しいことになります。豊臣朝臣羽柴藤吉郎秀吉が正式な名乗りで、厳密に言うと羽柴から豊臣に変わったわけではないことになります。でも、まあ普通は「とよとみのひでよし」とは言わんよなあ。「の」問題はなかなか難しいようですが、坂田公時の「坂田」は名字ではなく姓なので、「さかたのきんとき」でOKでしょう。公時は「金時」とも書き、金太郎の成長後の名前です。桃太郎も金太郎も鬼退治をしているのですね。

源義経の四天王として「亀井片岡伊勢駿河」とよく言われますが、亀井六郎、片岡八郎、伊勢三郎、駿河次郎のほかに、佐藤継信、忠信兄弟と鎌田盛政、光政兄弟の組み合わせとか、佐藤兄弟に伊勢三郎、武蔵坊弁慶を加えたものとかいろいろあります。徳川四天王は「酒井忠次・本多忠勝・榊原康政・井伊直政」、さらに十二人を加えた徳川十六神将というのもありますな。ものまね四天王と言えば、「コロッケ・清水アキラ・栗田貫一・ビジーフォー」でした。こうして見ると、四天王というのはかなりあります。授業をしていて、「四人のすぐれた人を何と言うか」と聞いても「四天王」は出てきます。ところが「三人のすぐれた人」は出ない。「三羽烏」は死語なのでしょう。「三傑」というのもありますが、こちらは格調が高すぎる。蕭何・張良・韓信は「漢の三傑」、諸葛亮・関羽・張飛は「蜀の三傑」です。日本では、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康が「三英傑」と呼ばれますし、「維新三傑」は西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允です。でも、具体的に「三羽烏」と言われても、じつは有名なものはあまりなさそうです。上原謙、佐分利信、佐野周二を「松竹三羽烏」と言いましたが、いまどきだれが知ってる?

では、二人はどうでしょうか。「聯璧」「連璧」というのもありますが、日本語の文脈ではあまり出てこない。でも、「双璧」はよく使います。「松下村塾の双璧」と言われたのは高杉晋作・久坂玄瑞です。二つというのは選びやすいので、織田信長の家来の双璧なら、柴田勝家・丹羽長秀、秀吉の双璧なら竹中半兵衛・黒田官兵衛、ややマイナーなところでは、大友家の双璧が立花道雪・高橋紹運、伊達家の双璧が片倉景綱・伊達成実、ひとむかし前のアイドルの双璧は松田聖子・中森明菜、怪獣の双璧ならゴジラとガメラ、特撮ヒーローの双璧はウルトラマン・仮面ライダー、RPGの双璧はドラゴンクエスト・ファイナルファンタジー、私大の双璧、早稲田と慶應…。では、一人は? これはありません。よく考えたらわざわざ言う必要はないんですね。

逆に多くなると覚えきれません。「賤ヶ岳七本槍」と言われても、福島正則・加藤清正・加藤嘉明・片桐且元・脇坂安治、うーん、あと二人は? 真田十勇士は言えます。猿飛佐助・霧隠才蔵・三好清海入道・三好伊三入道・海野六郎・望月六郎・根津甚八・筧十蔵・穴山小助・由利鎌之助。忍者系二人、坊主系二人、数字のはいったのが六・六・八・十、あとは「助」がつくのが二人です。「こんなん覚えて何になるねん」と言われればたしかにね。でも、昔は歴代天皇を覚えさせられたのです。「じんむ・すいぜい・あんねい・いとく…」というやつで、私は十七、八代目であやふやになります。四代連続なら、だれでも言えます。「明治・大正・昭和・平成」。ただし、「平成天皇」という言い方はまだ存在していないので「今上天皇」と言わないとだめかも…。

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