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2013年3月 1日 (金)

勉強の敵、マンガについて②

※四条烏丸教室Mさんのお母さん、励ましのお言葉ありがとうございます! 「もうやめろ」と生卵を投げつけられないかぎり、ブログ続けます!!

◇◆◇

さて。

前回少年マンガについて熱く語っているうちに私のハートに火が点いてしまいました。

今回は、少女マンガについて熱く語ってもいいでしょうか! いや、ぜひ語らせていただきたい!

ということで、本日は、かつて少女だったすべての方にお送りしたいと思います。趣味が合うかどうかは別にして。

森脇真末味さんというとても絵の上手い少女マンガ家がいらっしゃって、僕の姉がアシスタントをしていたことがあるんです。で、僕が高校生のときに、姉から、自分も手伝った作品が今度『プチフラワー』(だったかな?)に掲載されるから読むように、というお達しがあって、それがたぶん少女マンガの読み始めだったと思います。

少女マンガ全盛といいますか、黄金時代でした。『プチフラワー』とか『ぶ~け』とか。『LaLa』とか『花とゆめ』なんてのもありましたね。『別マ』とかね。今もあるんですか? よく知らないのですが。

森脇さんはほんとうに絵が上手でした。人物のかき分けがすごいんです。タイプのまったく異なるかっこいい(必ずしも美形ではない、美形ではないが男くさくてかっこいい、なんてのもいる)男が何種類も何種類も描けるんですよ。そんな少女マンガ家いないと思うんですけど。顔も、体格も、服装の趣味もかき分けます。そして、そのすべてが登場人物の性格や生い立ちをきちんと反映しています。『ブルームーン』というシリーズでは、顔はそっくりだが性格がまったくちがうイケメンの双子を描き分けていました。表情で描き分けるんです。すごかったなあ。インターネットで森脇ファンの方が、「背の高い男」の体格を、がっちり系、ほっそり系、着やせするけど意外とたくましい系など何種類にもかき分けていた、と激賞されていましたが、まったくそのとおり。とにかくかっこいい男のキャラクターを造型させたら右に出る者がいなかった、もう長くマンガを描いていらっしゃいませんが、少なくともこの点ではいまだに彼女を超える人はいないんじゃないかと思います。話としては結構痛ましいものが多かったですけれど。

実は、姉のツテで、ファンレターを送ったことがあるんです。年賀状をお返事にいただいて感激しました~。キラー・カン※の色紙とならぶ僕の宝物です。

※キラー・カンは辮髪の悪役プロレスラー。得意技はモンゴリアン・チョップ(モンゴル人は辮髪ではなかった気がするが)。ニードロップでアンドレ・ザ・ジャイアントの足を折ったということで有名になった(事実はちょっとちがうらしい)。先輩に、キラー・カンが経営する「スナックカンちゃん」へ連れて行ってもらったことがあり、そこで色紙をもらいました。キラー・カンとならんで写真にうつっているのが自慢。

さて、絵がすごいということでいうと、森脇さんとは全然雰囲気がちがいますが、内田善美さん。主人公の大学生が、生命の宿った日本人形の女の子と暮らす『草迷宮・草空間』、夢のなかで幽霊になる男の話『星の時計のLiddell』である種の頂点をきわめた観がありました。なかなか単行本が出ない! 凝る人だから絵を描きなおしてるんだろうなあ、はやく出ないかなあ、と友だちと話していた覚えがあります。僕は『空の色ににている』という話が好きでした。これは、ぶ~け全盛期のぶ~けコミックスのなかでも白眉だったと思います。観念とか思いとかいったものと物理的な存在とのあいだの、あるいは、ただの物と生命とのあいだのゆらぎを絵とストーリーで表現していくところに、スリリングなおもしろさがあったように思います。

内田つながりで、内田美奈子さん(内田春菊にいくと思われた方もいるかもしれませんが、ちがうんです)。『赤々丸』がおもしろかった! まじめな優等生の生徒会長白井くんが、未来にタイムスリップしてしまう話です。しかし、タイムスリップした白井くんは記憶を失っており、しかもなぜか二人に分裂してしまっています。ひとりは、まじめな白井くんをさらにガチガチにした「白々丸」、もう一人は、うんとワルくなった「赤々丸」です。未来の世界では、宇宙からやって来た、ネコにそっくりの宇宙人であるネコ族の人々が、地球人の差別に耐えかねて反乱を起こします。そのネコ族対地球人の対立に二人がからんでいくという話です。白々丸や赤々丸にからんでくるネコ族のキャラがおもしろくて。昔よくテキストの例文などで「ねこ丸」という名前を使いましたが、実はこの『赤々丸』に、「猫 猫丸」という名前の子が出てくるんですね。そこからとったんです。

もう昔のことなので例によって記憶があいまいですが、高校生から大学の教養課程にかけて他によく読んでたのは、まず小椋冬美さん、それから岩館真理子さん。おお、こんなデリケートな感性の世界があったのか! と粗雑な人間性が売りだった僕はとてもびっくりし、かつ、うっとりしました。男の子でもとっつきやすかったのは、川原泉さんとか松苗あけみさんじゃないですかね。川原泉さんはなかなか異彩をはなっていました。『ゲートボール殺人事件』とか『甲子園の空に笑え!』とか、他の少女マンガとはちがう雰囲気でおもしろかったです。松苗さんは、生き生きとしたキャラがたくさん出てきて、ドタバタしていて、テンポがよくて、ちょっと高橋留美子さんに似ているような気がします。『純情クレイジーフルーツ』とか読んで、女の子ってこんなふうに思うんだね~、わしらとは全然ちがうのう、なんて勉強していました。

少年マンガのテーマが『たたかい』だとしたら、少女マンガの主要テーマはやはり『恋愛』でしょうか。それこそ、川原泉さんなんてあまりそういう要素が強くなかったし、いちがいにそうとは言いきれないものの、ポップスの世界と同じで、やはり定番は『恋愛』ですよね。恋愛マンガの王道だと僕が思っていたのは、なんといっても、くらもちふさこさんであります。とにかくストーリー作りがうまいです。『たたかい』は、どう勝つかが見せ所になりますが、『恋愛』もやはりどう障害を乗りこえるかが見せ所で、もっと言うと、どんな障害を設定するかによっておもしろさが変わります。ロミオとジュリエットであれば、家同士の対立というのが障害でした。

しかし、そんな古風な障害では、現代の若者にはリアリティーがない。多いのは、自分の相手に対する評価(あるいは相手の自分に対する評価)が最も大きな障害になっているというパターンですね。その障害が乗りこえられる、というか、障害でなくなっていく過程がおもしろいです。簡単にいうと、いやなやつだと思っていたら、意外といいところを発見してしまい・・・・・・的なパターンですね。その「発見」をどう見せるか、そこが勝負です。雨の降る公園で捨て猫を抱き上げているのを目撃、なんてのではダメだちゅうことです。

いろいろ変わった障害を設定してくれたのは川原泉さんですね。恋愛というところまでいかないんですが、でもはじめに障害ありきです。たとえば、笑ったり泣いたりするとどこからともなく花が出現してしまう女の子、というのがありました。この突拍子もない設定自体が少女マンガに対するパロディーになっているわけですが(少女マンガの背景って意味もなく花が咲き乱れていることが多かったですからね)、それが物語においてひとつの障害として機能しています。具体的にいうと、その女の子は気味悪がられるのが怖いので、親しい人の前以外笑わないようにしているわけです。それで、彼女の家庭教師をしている大学生の男の子は、自分はきらわれているのではないだろうかと悩み、必死で彼女の前でギャグを連発します。しかし、彼女は決して笑わずむすっとしているわけです。これが障害です。なかなかおもしろそうでしょ?

しかし、少女マンガにおける恋愛モノで僕が個人的にいちばん好きだったのは、王道中の王道でありますが、やはりくらもちふさこさんです。そのなかでも私は『Kiss+πr²』を強く推したい!

どうなんでしょう? やはりくらもちふさこ作品で有名なのは、『いつもポケットにショパン』とか『アンコールが3回』とか『天然コケッコー』とかなんでしょうか。うんうん、たしかにどれもおもしろいね。

しかし、やはり『Kiss+πr²』が僕にとってはいちばんですね。たぶん、僕が男だからでしょうね。というのも、この作品は、主人公が高校生の男の子で、しかも男同士の友情が、少女マンガにはありえないほど上手く描かれているんです。

さあ、あてにならない記憶を頼りにどんな話だったか復元してみましょう。

主人公の男の子は、幼いころに母が家出をしたという過去を持っており、現在はアルバイトをしながらひとりで暮らしています。将来はロックミュージック系のライターになりたいという夢がありますが、クラスのなかでもわりと目立たない、大人しい男子です。自分は基本的に運の悪い人間だと思っていますが、かといってそれを不満に思うのでもなく、ただ淡々と毎日を送っているような、今でいう草食系の男子です。それがひとつ年上の「葵さん」という女の子に好かれたことから運命が変わっていきます。主人公にとって「葵さん」は幸運の女神だったわけですが、その「葵さん」に対する主人公の見方の変わっていくところが、すごく良かった。単に幸運をくれるからというだけではなく惹かれていく、その感じがとてもよく描けていたように思います。

たとえば、「葵さん」の家におよばれしたときに、「葵さん」の家族がみんな主人公にぶしつけなくらい興味しんしんの態度をとりますが、主人公は、戸惑いながらも「葵さんがふだん自分のことをどんなふうに家族に語ってくれているのかわかる」と感じます。また、お好み焼きか何かごちそうになるんですが、「葵さん」のお母さんがこれをつけるとおいしいよと言って出してくれたマヨネーズについても、マヨネーズなんて自分も持っているけどと思いつつ、言われたとおりにマヨネーズをつけて(あれ? ほんとうにすごくおいしくなる)と感じます。そして、「これをつけるとおいしいよ」という、その言葉こそが大きかったんだと気づきます。

人を好きになる過程をこんなにもさりげなくというか遠回しにというかいろんなクッションを利用してつつましく描いているのがすごいなあと。

そして男の友人。ひとりは古くからの友人の「青沼」。高校生なのに、すでに体型は中年で、黒縁の眼鏡をしていて、ゲームが好きなオタクっぽい子です。もう完全にもてない系ですね。もうひとり、新しく友だちになる「ポパイ」。「青沼」とは対照的にわりと美形です。ヘアスタイルもソバージュみたいにしていておしゃれです。ただし、やはりこの人もオタク系です。「怪談オタク」で、すぐに百物語をしたがる子です。男同士の友情にもきちんと嫉妬がうまれることなど、よくわかっていてリアルに描けていたと思います。

卒塾生で興味のある方はぜひ一読してみてください。いま書店で入手できるのかどうかは知りませんが。もし、入手できないがどうしても読みたいという方がいらっしゃればお貸ししますぜ。・・・・・・家捜しすれば見つかるはずなので。

少女マンガについて語ると言いつつ、きわめて偏った話しかしていませんが、どうしても一度『Kiss+πr²』について語りたかったという、実はそれだけだったのです。しかし、いざ語りはじめてみると、意外と細かいところをおぼえておらず・・・・・・うう。

失礼しました。

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