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2013年6月15日 (土)

目くじらを立てる

国語科講師である以上、ことばの区別に関しては厳密であるべきかと思うのですが、

最近の「それは誤用だ」と言う主張が多いことに、すこし引っかかります。

もちろん、明らかな誤用が多くなっていると感じられるのも事実で、気になる人には気になるというのもうなずけます。

×取り付く暇も無い → 取り付く島もない

×狐に包まれる → 狐につままれる

 などは中学入試でも出たことのあるものですが、

×老体に鞭打って → 老骨に鞭打って

×極めつけ  → 極めつき

などになると、言われてみればそうか、と気づくレベルです。

×~いざ知らず → いさ知らず

×~采配をふるう → 采配を振る

なんてのは、「蘊蓄」レベルでしょうか。こういう誤用を集めた本もたくさんあるようです。

最近では、よくテレビで

「間髪を入れず」を「かんぱつ」と読むのはまちがいで、「間、髪を入れず」だ、とか、

「綺羅星のごとく」を「きらぼし」と読むのはまちがいで、「綺羅、星のごとく」だとかの指摘があります。

こういう話題が大嫌い、虫酸が走る、生理的に受けつけない、あーいやだ、という人もいることでしょう。

こういう話題で盛り上がる仲間、というのもいますね。 あ、国語科講師に限定しないでくださいね。

DVDはデジタル・ビデオ・ディスクじゃなくて、デジタル・バーサタイル・ディスクだよね!

なんて言うと、「おー!」と盛り上がるのは、どうも男性が多いようです。

ともあれ、言葉の移り変わりが激しい時代ですから、その中で誤用も生まれるのでしょう。

新語、消えていく言葉もありますね。

ふと思ったのは、「イケメン」「イクメン」「草食系」などの男性を形容することばが生まれるかげで、

「マザコン」ということばが消えているということです。

「マザコン」男性は減っているのでしょうか?

確かに「言い得て妙」という新語が生まれると使いたくなるのが人情で、われもわれもと一気に消費されていきます。

「美男子」と呼ぶにはちとわざとらしいレベルの容貌の方を軽い感覚でほめるには「イケメン」は手ごろです。

かくしてイケメンが増殖する。

「マザコン」も、※1佐野史郎さん扮する「冬彦さん」のお蔭(誤用)で、正しく親孝行な、単に母親思いの男性までが、

マザコン呼ばわりされる悲劇もあったのではないでしょうか。

言葉は世相を映す鏡 であるならば、言葉を正す鑑 でありたい、というようなことが、

辞書を編纂した、ある方の著作に書かれていたと記憶しています。

国語科講師として難しい立場に立たされるのが、宿題プリントに書かれた保護者のコメントに誤字や誤用を見つけてしまったときです。

さりげなく訂正しておくべきか、見て見ぬふりをすべきか、※2生徒への教育的配慮で訂正すべきか、やはり失礼だからやめておこうか、いや、もしかしたら試されているのか!? 

など、考え込んでしまってそれまで快調に書いていた(講師からのコメント)が停滞してしまいます。ここは斎戒沐浴して精神統一せねばというくらいの厳粛な気持ちでえいっと訂正することもあるのですが、

「国語の先生に見られると思うと、怖くて保護者コメントを書けません。」

という保護者コメントに「!」となってしまったこともあります。

塾生のみなさんの記述問題の採点・添削の際にも、悩むことしばしばです。

あまりに細かく添削をすると、「けちをつけられた」感にさせて、かえって意欲を失わせる結果になりはしまいか。

「やはり記述で点数は取れない」と思わせてしまうのではなかろうか。

そんな思いになることがあります。

 ※1昔、先生って佐野史郎に似てるよね、と女子生徒に言われて結構ショックだった。

 ※2 学校教育法かなんかでは、小学生は「児童」なので誤用かもしれませんので一応。

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