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2013年11月10日 (日)

シネマ食堂街①

今日は、わたしが今年もっとも衝撃を受けた話を紹介します。

・・・・・・なんというか、けっこう濃い話なので、こんなところに書いてもよいものかどうか・・・・・・。

ま、いっか。

僕のはじめての北アルプス体験は剱岳です。

もともと僕は、高い所が苦手でした。歩道橋もいやだったぐらいですから、山登りはおろか、観覧車だって当然アウトです。はるか昔のことですが、青春の1ページといいますか、とある女性といっしょに観覧車に乗ったときのこと、かの人が隣に腰をおろそうとするのを「やめろ、一方に重量が偏ったら傾くだろ」とわめいて全力で拒否、きわめて気まずい雰囲気に。うーん、まさに青春の一コマですね。しみじみ。

とにかく、そんなにも高い所がダメで、おまけに体力にも運動神経にも自信がなかったので、北だろうが南だろうがアルプスなんてとてもとても・・・・・・あたしゃそのへんの裏山程度のところでいいのよ、という感じのヤマノボラー(=山登りをする人)だったわけです。ウェアもいいかげんで、さすがにジーパンはまずいということで化繊の含有量の多い服は着ていましたが、雨具は自転車とかバイクに乗る人用の気密性の高い、むれむれのカッパ、靴はヒマラヤかどこかで買った安物のトレッキングシューズ、そんな出で立ちで京都の皆子山とか、奈良の白鬚岳とか、どこよそれ?というような山を本で見つけてきては登ってました。

そこへ彗星のごとくあるいは火星の衛星フォボスのごとく現れたのが、ヒマラヤ八千メートル峰に3回も(2回だったかな?)挑んだ(そして敗退した)男、山男のなかの山男、黄金の太もも、Y田M平先生であります。

かれは僕に言いました。

ヘイ、今度、山登りに行かないか? 算数のY川氏もいっしょさ。

算数のY川先生も独自に山登りの魅力にとりつかれ、すでに北アルプスにも何度か登ったことがあるという話でした。

そのとき、Y田先生が連れて行ってくれたのは、雪彦山という姫路の近くにある山です。低山ですが、ちょっとした岩場があり、ちょっとアルパインな気分が味わえます。

ちなみに、Y田先生はきわめて保守的な性格の持ち主で、とにかく自分がかつて登ったことのある山、それも庭のごとく知悉している山にしか登りたがりません。その割には道に迷うのが不思議です。その後も雪彦山には岩登り(いわゆるロッククライミング)の練習で二度行きましたが、行く度に山中をさまようことになりました。たしかに岩場というのは一般登山道からはずれたところにあるのでわかりにくいんですが、Y田先生はかつてさんざん通ったにもかかわらず迷うため、われわれはいつも岩場にたどり着くまでに体力と時間を使い果たし、結局クライミングなどほとんどできず、懸垂下降だけして帰ってくるのであります。

それはともかく、ま、そうやって山行をともにするなかで、北アルプスはいいですよと、Y田先生およびY川先生に勧められて、ついその気になってしまったわけですね。行きましたよ、剱岳。

新田次郎の小説が数年前に映画化されていましたね。『剱岳 点の記』とかいうやつです。

この、初の北アルプス、それも剱岳登山でも、僕はやってはいけないことをやらかし肝を冷やしたわけですが(かいつまんで言うと、山頂でのんびりサッポロ一番を食べビールを飲んでいたら下山が遅くなり途中で日が暮れてしまった)、今日はしかし登山の話がしたいのではありません。

下山してからの話であります。

富山市に出て、さあ、おなかもすいたし、ビールの1本か2本、できれば3本ぐらいも飲みたいものだと思って、店をさがしていたら、「シネマ食堂街」と書かれた、おそろしく古いビルがありました。まさに昭和の香りふんぷんたる前時代的建造物です。ここなら昼から営業している居酒屋があるかも~と思って入ってみると、「あや」という名前の店が開いていました。入口には「美空ひばり後援会なんとか支部」みたいな貼り紙。

店内には美空ひばりのビデオが流れ、お客さんがふたりいました。

カウンターの中にいたのは、なんといったらいいんでしょう、男みたいな顔をした短髪のおばちゃんでした。いるじゃないですか、たまに、男みたいな顔した人。

客のひとりはまだまだ元気な感じのおじいさんで、暇をもてあましていたらしく、僕のリュックをみるや、どの山に登ったのかとかどこから来たのかとかいろいろ話しかけてきました。

もうひとりの客はおばあさんで、カウンターにかがみこんでちびちびとビールを飲みながら食い入るようにビデオを見つめ、「ひばりぃ~」とつぶやいているのでありました。

「うわあ~、なんだか濃いところに来ちゃったな~」と思いながら、僕もビールを飲み、仕方なく美空ひばりの歌声に耳を傾けていました。

 さて、ここからが濃い話になっていくわけですが、余計なことを書いていたら時間がなくなってしまいました。というわけで、今回は「シネマ食堂街①」ということにして、次回へつづく!

 

 

 

 

 

 

 

 

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