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2024年8月31日 (土)

今こそ島への愛を語ろう⑦~礼文~

何年か前にもちょっと書いたことがありますが、はじめて礼文島に行ったのは高校1年生のときです。うちは決して裕福な家ではなかったんですが、わりと寛容なところがあって、北海道に一人旅に行きたいというと行かせてくれたんです。北海道の砂川というところに親戚が住んでいたので、極力そこに泊まるという条件つきでしたけど。そして旅行代はその後毎月小遣いからさっ引かれることになりましたが。

まずは詳細な計画を立ててそれを見せなさいというので、確か2週間分くらいの綿密な予定を方眼紙にびっしりと書き込みました。今はどうか知りませんが、当時、道内であれば普通列車だけでなく特急の自由席も2週間乗り放題になる周遊券があったんです。それを使って北海道を旅行するのが流行っていました。もちろん大学生ばっかりです。高校1年で、というのはあまりいなかった気がします。その予定はあっさり却下されました。ひたすら夜行の特急で夜間移動を繰り返すというハードな計画だったので「あほかお前は、砂川のおじさんちにもっと泊まりなさい」と言われてしまいました。で、釧路方面と利尻島は泣く泣く諦め、もう少しマイルドな計画を立てました。利尻はあきらめたんですけど、礼文はあきらめられず、稚内から船に乗って行くことにしました。

稚内駅の北に野寒布(ノシャップ)岬という岬があります。有名な納沙布(ノサップ)岬とはべつものです。礼文島へ向かう船に乗る前に少し時間があったので行ってみました。野寒布岬がどんなところだったかは記憶にありませんが、戻る途中に出会ったおじいさんのことは覚えています。ステテコとランニングシャツ姿のおじいさんに、どこから来たのかと声をかけられ、大阪ですと答えると、うちに来てお茶でも飲んでいけと言うのです。船の時刻に間に合わなくなるかもしれないなー、でもせっかくの出会いだからなーなどと躊躇しながらついていくと、おじいさんが突然横歩きになり、あっと思う間もなくおしっこをし始めました。横歩きしながらおしっこです。立ち△ョンならぬ歩き△ョンです。びっくりしました。結局、船に間に合わなくなってはえらいことなのでお茶をいただくことなくおじいさんには別れを告げましたが、インパクト大でした。

礼文島は夢のように美しい島です(冬は大変そうですけど)。当時、島の北にあるユースホステルが主催する、島の西海岸を8時間かけて歩くツアーがありました。このコースは今は大部分が通行禁止になっているようです。その頃から単独行動を愛していた私はツアーには参加せず、同じコースを一人で逆向きに歩きましたが、ほんとうに疲れました。とにかく考えなしにそういうことをしてしまうんです。自分の体力で8時間歩き続けることができるのかとか、全然考えません。途中で、東京の東村山から来たという二人組の大学生と一緒に歩くことになったのですが、彼らと会わなければ悲惨なことになっていたかもしれません。実は、その二人組には、何日か前にオホーツク海沿岸を走るローカル線で会っており(時刻表を見せてあげたのです)、偶然の再会でした。盆過ぎていたので波が高かったのですが良い感じの入江があったので三人で泳ぎました。もちろん海パンなんか持っていなかったのでジーパンで泳いだわけですが、ジーパンで泳いだりしてはいけないということを身をもって体験しましたね。とにかく考えなしにそういうことをしてしまうんです。濡れたジーパンてめちゃくちゃ重いです。波も高いですし、ほんとに溺れるかと思いました。でも、ひとしきり泳いだあと、三人で浜辺に寝そべって風に吹かれているとすごく元気になりました。こういうことってあるんだなあと感心しました。夕方近くなって、三人で牧場のそばをとぼとぼ歩いていたら、ワゴン車が通りかかり、さすが大学生ですね、二人組がさっとヒッチハイクしてくれたおかげで、僕もそれ以上歩かなくて済みました。

それから数十年後、私は再度礼文島に行きました。もう一度西海岸を歩いてみたかったのですが、それはかなわず、でも、のんびりと懐かしい風景を見て歩くことができて幸福でした。

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