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2017年2月の1件の記事

2017年2月 9日 (木)

ほな、このへんで。

襲名もそうですが、有名人の名前をもらって名付けをするというのはイメージを借りるという意味があります。自分があこがれているスターの名前を子どもにつけるのは、そのスターのように育ってほしいという気持ちの表れでしょう。もっともつけた当座はよくても、あとあと困った事態になることがあります。田中角栄が首相になって「今太閤」ともてはやされたころ、あやかろうと思ったのか角栄と名付けられた男の子がいました。みんなからチヤホヤされたのも束の間、なんと田中角栄は逮捕されてしまいました。すると、今度はみんなから名前のことでからかわれ、いじめられる羽目になったとか。普通、改名が認められるのはよほどの事情がないと無理だそうですが、角栄くんの場合はスンナリ認められました。

チンパンジーにイギリスの王女の名前をつけたのも一時大騒ぎになりましたね。不謹慎だというのでしょうが、「サルあつかい」だからダメなのであって、これが金魚の名前であれば問題はなかったかもしれません。パンダでも許されたでしょう。ただパンダの場合、「ランラン」「カンカン」のように「くり返し」系の名前がなぜか多いようです。最初の名前が有名になりすぎて、みんなそれを継承しているということでしょうが、それならいっそ「ランラン15世」とか「六代目カンカン」にしてもよいのでは。

パンダもそうですが、何かの名前を公募することがよくあります。これも安易な名前に落ち着くことが多いようです。結局思いつきやすい名前になるのですね。猫なら「ニャン吉」とか「ニャン太郎」とか。まちがっても「アメンホテップ」とか「兀突骨」とか「ウラジミール・サモイロヴィッチ・ホロヴィッツ」とかにはなりません。おどろおどろしい名前にもなりませんね。「ドグラマグラ」とか。これは夢野久作の小説ですな。日本推理小説の三大奇書の一つです。あと二つは、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」。ただし、竹本健治の「匣の中の失楽」を入れて四大奇書とか、おれの作品を入れて五大奇書だと言う人もいて、いろいろ説はありますが、「奇書」の作者としては夢野久作が最もふさわしい。夢野久作は「押絵の奇蹟」とか「あやかしの鼓」などもいいですね。前者は江戸川乱歩絶賛で、いかにも乱歩好みです。「死後の恋」も捨てがたい。ロマノフ王朝の生き残りの王女という設定で、ユル・ブリンナーとイングリッド・バーグマンの映画にもありました。バーグマンはスウェーデン系なので、ほんとうはベルイマンという発音が正しいようです。同じスウェーデン出身のイングマール・ベルイマンという監督はバーグマンではなく、ベルイマンになっているのは、変といえば変です。オードリー・ヘップバーンやキャサリン・ヘップバーンのヘップバーンもつづり通りに読めばたしかにヘップバーンですが、ヘボンのほうが実際の発音に近いらしい。ヘボン式ローマ字のヘボンですね。かといって、オードリー・ヘボンというのもなあ。

スウェーデンと言えばノーベル賞ですが、ボブ・ディランとはこりゃまた予想外でしたね。村上春樹は万年候補で終わるかもしれません。私はディランよりもジョーン・バエズのほうが、声もきれいだし、歌い方も素直で好きでした。ディランはあの癖のある歌い方がファンにとってはたまらんのでしょうし、バエズもよく物まねしていますが。「500マイル」とか「パフ」とか「花はどこへ行った」、「天使のハンマー」などで有名なPPMもきれいなハーモニーでした。「ピーター・ポール&マリー」という三人組ですから、正しくはPP&Mだし、小文字のppmとはちがいます。小文字のほうは「パーツ・パー・ミリオン」の略なので、100万分のいくらということになります。ppcなら「パーセント」で、100分の1になり、PPAPならピコ太郎です。

PPAPというのも妙なことばで、文脈にかかわりなく、いきなり言われると何のことかわかりません。本来、アルファベットの略語というのは、DAIGOの「ギャグ」のレベルなんですよね。SKTで「精も根も尽き果てた」とか、MKSで「負ける気がしない」とか。元のことばに復元するのは不可能です。よく使うATMでも何の略かわからずに使っています。調べてみたら、「オートマチック・テラー・マシーン」の略らしい。このテラーも「電話する人」というわけではなく、銀行の窓口係のことを言うそうな。そういえば銀行を舞台にした『花咲舞が黙ってない』というドラマで杏や上川隆也が何度も言ってました。

中には「スイスイ行けるICカード」の意味で「Suica」ということばができたあと、「スーパー・アーバン・インテリジェント・カード」の略だとした「あと付け」のケースもあります。「ICOCA」も「ICオペレーティングカード」の略らしいのですが、関西弁の「行こか」と掛けるために最初のことばを選んだ可能性があります。タイタニックが打電したと言われる「SOS」は、モールス信号にすると「トントントン・ツーツーツー・トントントン」で、打ちやすくわかりやすいので採用されただけで、特に意味はないとか。ということは「セイブ・アワ・シップ(我々の船を救え)」の略だという説もあと付けですね。朝日放送の「ABC」も「アサヒ・ブロードキャスティング・コーポレーション」なので、自然にそうなったように思えますが、最後を「コーポレーション」にする必然性はありません。「MBS」は「マイニチ・ブロードキャスティング・システム」ですから、「システム」であってもよかったわけです。朝日放送は最初から「ABC」狙いだったのではないでしょうか。

ここまで来ると、由緒あることばあそび「折句」と同じですね。「から衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞ思ふ」の各句の頭に「か・き・つ・ば・た」を折り込んでいるというやつです。今でいう、「あいうえお作文」ですね。自己紹介するときに、「やきもちやきで、まんががすきで、しぬきでがんばれずに、たこやきばかりたべている、やましたです」とやるようなやつです。ただ残念ながら、ことば遊びとしてはおもしろくない。たった一文字の拘束ではつつまらないのですね。だじゃれでも、「しまったしまった島倉千代子」とか「もうネルトン・ジョン」のように、一部分しか合わず無理感ただようのは、おもしろみは少ないものの、「あいうえお作文」よりましです。「いい加減に椎茸」「ほな、このへんで、えんどう豆」とか「何ちゅうことを郵政大臣」「オナラ一発、国務大臣」「また調子に農林大臣」「ほな、このへんで、吉田茂」のように、連発すると多少はおもしろくなるのですが。むかし、漫才のWヤングがやってました。温泉の名前とか民謡の名前で連発していましたね。ということで「ほな、このへんで、おいとこ節」。

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