小学生のときに読んだ本⑤
とらとらねこちゃん 上崎美恵子・西村郁雄
結構印象に残っている話ですが、いつごろ読んだものやら?
低学年だったと思います。女の子に借りて読んだような微妙に甘酸っぱい記憶が・・・・・・。
主人公が女の子でした。僕は主人公が女の子の物語はあまり読まないので、なかなかレアなケースです。
なぜ女の子が主人公だと読む気が起きないのかなあ? 少女マンガはよく読んだのに。松苗あけみさんとか岩館真理子さんとかくらもちふさこさんとか・・・・・・少女マンガ全盛期でしたねぇ。女の子って、全然わしら男とはちがうんだのう、と勉強になりました。
『とらとらねこちゃん』は、主人公の女の子がネコを拾うところから始まっていたと思います。トラみたいな模様のネコなんですが、何かきっかけがあると(どんなきっかけかは例によって忘れました)トラに変身してしまうんです。そういう話です。しかもトラになると空を飛べるとか飛べないとか・・・・・・ああ、あやふやだ。そもそもネコを拾うんじゃなくてトラの姿でいるのを見つけるんだったっけ?
強い動物、あるいは速い動物をしたがえてるのって、憧れますよね~。
『バビル2世』のロデムとか。『海のトリトン』のイルカとか。
白土三平『カムイ伝』のカムイが鷹を腕にとまらせているのも渋かった。
白土三平といえば、昔『サスケ』がアニメ化されていて人気でしたが、後に原作マンガを読むとラストのあまりの悲惨さにびっくり。カラオケでよく『サスケ』の主題歌を歌いましたが(いまだにナレーションの部分から言える・・・・・・)、なんだか脳天気に盛り上がっていたのが申し訳ないぐらいの悲惨さでした。
村上春樹の短編に、結婚式に出ると眠たくなる主人公の話があり、居眠りをしてしまった主人公が「シロクマといっしょに窓を割って歩く夢を見た」と彼女に語るのを読んで、激しく「いいなあ」と思った覚えがあります。
シロクマというところが何となく村上春樹っぽいですね。僕だったらやはりヒグマかなあ。
ヒグマと肩を組んで飲み歩いたりしてみたいです。ふたりともべろんべろんになって、ゴミ箱けっとばしたりして。みんなヒグマが怖いから寄って来ないんです。で、酔いつぶれてヒグマにおんぶしてもらう、と。ヒグマはタクシーに乗ろうと思うんだけど、運転手に断られちゃうんですよね。「酔っぱらいとクマはお断りだよ」とか言われて。それで、僕をおんぶしたヒグマがとぼとぼ夜の街を歩いて帰るんです。たまんないな。二日酔いになって、縁側でヒグマの腹を枕に昼寝したりして。
そういえば(と、とめどなく脱線していくわけですが)、以前に蛭子能収というマンガ家が、お葬式に出ると笑いがとまらなくなると不謹慎なことを言っていましたが、これはどういう心理なんでしょうね。結婚式で眠くなるのとはまた全然ちがうんでしょうね。たぶん、いつでも心がその場から半分はみ出しているというか、自分がいる場面を、外から見てしまうんでしょうね。異化作用というと立派過ぎるかもしれませんが、一歩も二歩もひいたところから、これはいったい何だろうと白紙の気持ちで見直してみると、いろいろなものがへんてこに見えてくるのと同じなのかなと思います。
たとえば、会社の行き帰りなんかに、いつもの見慣れた風景をちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、よ~く見るんです。はじめて見る風景を見るようにして。
すると、見慣れたはずの風景が、妙に新鮮に見えてきたりします。それとどこか似ているんじゃないかと思うんですけど。
これは確か太田省吾という劇作家が『劇の希望』という本に書いていたんじゃなかったかなあ。いつもの風景をちょっとだけよく見る、だったか、ちょっとだけ角度を変えて見る、だったか。太田省吾さんは、「いつもの」とか「見慣れた」とかいった枠組みでものを見てしまう、そういう心のあり方を問題にしていたように思います。
もちろん、「いつもの」「見慣れた」だから良いんだというとらえ方もあります。そういうふうに思えるのなら、何も問題ないわけです。
そうではなくて、「いつもの・・・・・・」「見慣れた・・・・・・」だから飽き飽きした、自分の生活には(ひいては自分の人生には)何もない、というとらえ方に傾いてしまうと、日常は生彩を欠いて苦痛なものになってしまいます。
それは、自分の生活や人生というものを「劇の視点」でとらえようとするからそうなってしまうんだと、太田省吾さんは書いていました(確か)。劇的なことが起こるのが当たり前である劇の視点、ではない視点で、日常を豊かに感じることのできるような視点でものを見ることができれば、それにこしたことはないように思います。
ああ、話がそれっぱなしだ・・・・・・。どうしたらいいんだろう。
さあ、そこで、『とらとらねこちゃん』!
「いつもの」「見慣れた」日常が苦痛なあなたに!
何の変哲もないネコがトラに!
そして、「とらとらねこちゃん」が最後に選ぶ生き方とは!
乞うご期待!
現在おそらく入手不能!!
(西川)