シネマレビュー(3のその1)
入試が始まり、希っ子たちも次々と人生初めての中学入試に臨んでいます。
希学園では、「当日激励」を行っています。大学入試や高校入試を受ける人たちとはちがい、中学入試はまだ11歳・12歳の可愛い可愛い子どもたちです。
入試当日にどういう声をかけるか。100人を超える入試激励から、私と生徒1人だけの入試激励までさまざまな当日激励の場を経験しましたが、これほど難しいものはないように思います。
国語の先生として、一つアドバイスを。それは、
「文章は好意的に読め!」
です。なんか「!」などつけてエラソーな感じで恐縮ですが、戦いに臨む人へのアドバイスが、
「~た方がいいかなあ」「~してみれば?」
のような及び腰であっては役に立たない。という信念のもと、あえて偉そうに書きました。ただしピンクの文字で。
ここでなぜか「レミーのおいしいレストラン」という映画の紹介です。
またまた子ども向きの映画か。という向きも我慢してお読み下されば幸い至極です。
山下師匠のように30字要約はおこがましいので、50字くらいならなんとかなるかも。いや、古い文体の方が圧倒的に短くなるので、その手で要約をいたしてみますと、
「人語を解し嗅覚味覚に優れたる鼠、仏蘭西にありけり。食物を調理すことを志し人を助け仏蘭西料理店を開くに至る。」
となりましょうか。漢字って便利!「フランス」が3字で書けるんですから。
閑話休題それはさておき。
なんせ設定が荒唐無稽。ネズミが料理をしちゃいます。ついつい私などは、「いったい脚本家は、どうやってネズミが料理をする必然的・合理的な状況に持っていくのだろう」というところに興味を持ちました。
そもそも、「ありえないこと」が起こるのが物語にはつきもので、私などは小さい頃それがいやで童話などを読まなかった経験があります。魔法なんかがあれば強引なストーリー展開ができるからです。
この映画でも、非常にご都合主義的な展開、いわば「ツッコミどころ」が満載で、
「おいおい、どんくさいはずのリングイニ(主人公のネズミの手足となる人間)が、いきなり光GENJIばりにローラースケート履いて超人的な動きを見せて接客しとるやんけ!」
なんてことになります。
でも、そういうことは枝葉末節として、お話全体として描こうとしている主題のようなものを観ようとしなければ、映画そのものが楽しめない。
批判的に文章を読むことも、読解力を養う過程では必要な面もありますが、こと中学入試という場面で出された文章に対しては、作者や筆者、もっと言うと問題作成者の意図にそって読むことが求められているのですから、批評家の自分は押さえておいて、まずはよい観客となって読む方が、出題に対して素直な気持ちで臨めるのではないかと思います。
批評家というと、この映画には実に興味深い人物「アントン・イーゴ」なる孤高の批評家が登場しています。この人物が実によいスパイスとなってこの映画の味を引き立てています。その人物のどこに私が惹かれたかは次の回で。
受験生の皆さんが実力を遺憾なく発揮することを望みつつ。
つづく