小学生のときに読んだ本⑥
ハイエルダール『コンチキ号漂流記』
世界最強といわれた日本人クライマー山野井泰史さんが、カヤックだかカヌーだかを漕いだときに、垂直の魅力にとりつかれている自分だけど水平の魅力も悪くない、どこまでも漕いでいきたくなると文章に書いていましたが、まさにそんな感じの魅力満載です。
筏で太平洋をわたるなんて憧れますねぇ。朝起きるとトビウオがたくさん甲板に落ちていて、それを拾って食べる、なんて書いてあるんです。もうたまらないです。しかし、彼らは西洋人なので、それをフライにして食べるのだ。もったいない! なぜ刺身にしないのだ!
こういうサバイバルな感じ、いいですねぇ。アウトドアの原型はサバイバルだ!
山に行くと師匠のY田M平先生が、「お、このキノコは食べられるキノコですよ、あとでみそ汁に入れましょうか」などと軽々しく言うのですが、こういう人が山で調子にのって笑いがとまらなくなったりするんでしょうね。
そういえば学生時代、金に困った友人が、食べるものがなくて、近くの空き地からよもぎを引っこ抜いてきて、みそ汁に入れて食べたーと言ってました。
僕も学生時代は相当貧乏して、ガスや電気を停められたことがありましたが、草は食べなかったな~。
今どこかの大学で経済学の先生になってる先輩は、タバコを買うお金がないので、落ち葉を刻み、それを辞書を破った薄い紙で巻いて吸ってみたと語っていました。ワイルドな人でした。黴のはえた餅を「三色餅~」とか言って食べてましたしね。青カビはともかく黒や赤はやばいんじゃないかな~と思うんですけどね。
でも、すごい勉強家でちょっと憧れてました、とうてい真似できないんですけど。大学の研究室に寝泊まりして、夜中の3時まで勉強し、朝は9時に起きてまた勉強してました。体がなまらないように、腕立て伏せをしながら本を読んでいるという噂もありましたねー。サークル室の黒板に「少年老いやすく老人死にやすし」という、何が言いたいんだかさっぱりわからない格言を書いたりしてました。
おっと、『コンチキ号』の話でした。毎度話がそれまくりです。
ハイエルダールは民族移動に関する自説の難点を解消するために筏で太平洋を渡るんですが、肝心のそのアイデアは現在ほぼ否定されているようです。
民族の移動って、ロマンですよね~。
僕は、印欧祖語の話にすごくどきどきしてしまいます。
インドからヨーロッパにかけてさまざまな言語が広く分布していますが、それらの言語の共通の「もと」になった言語があったとされていて、印欧祖語と呼ばれているんですね。で、その言語を話していた民族はどうもカスピ海の北辺あたりにいたんじゃないかと考えられているそうです。ただこれには異論もあって、どこにいたのか結構議論になっているとか。日本の邪馬台国論争みたいなものですね。その民族が、紀元前何千年だか忘れましたが、インド方面とヨーロッパ方面に分かれて移動していったと考えられているんです。なんかこう、ぞくぞくしてきませんか?
邪馬台国よりそっちの方に心惹かれてしまうのはなぜなのかなあ? やはり前世が中央アジアの遊牧民族だったんじゃないかな。そうだったらいいんですけど。馬に乗ったりしてかっこいいし。
そういえば中央アジアを旅行したときに、カラクリ湖というおそろしく美しい湖のほとりでキルギス人に「ラクダに乗らないか」と誘われ、ちょっと高山病が出てふらふら気味だったんですが、ラクダに乗る機会なんてそうそうないからな、こいつは乗っとかないと後悔するな、と思って乗せてもらったんです。
それが母ラクダだったんですね。僕を乗せた母ラクダが立ち上がると、子ラクダがさびしそうに一生懸命すり寄ってくるんです。
そうしたらキルギスのおっちゃんが大声で怒鳴りながら子ラクダをしばくんです。まわりの人たちが(といってもキルギス人ばかりですが)何だ何だみたいな顔でこっちを見るでしょ。
こ、これは、なんか俺、すごくいやな奴みたいな感じになってるのでは?
金にあかしてラクダ親子の間を引き裂く、金満大国日本からの旅行者、みたいな?
乗るんじゃなかったと後悔しました。
(西川)