首都圏の思い出
関西の入試は一段落しましたが、首都圏は今がたけなわです。
実はわたくし、かつて首都圏で授業をしていたことがあります(最近は行ってません)。
関西人が首都圏で授業をする場合、最大の障壁は「言葉」です。
吉本芸人のおかげで関西弁は全国区になっているというものの、やはり関西弁は嫌いという人も多いのです。べつに嫌わなくてもいいじゃん、と思いますが、まあ、標準語なんて気持ち悪いという関西人も結構いますから、どっちもどっちですね。
大学時代、関西を離れていたころは、僕も関西弁があまり好きではありませんでした。べつに標準語がかっこいいとは思いませんでしたが、関西人はどこに行っても声が大きいような気がして、なんとなく気がひけてしまうんですね。
で、首都圏に週1回出向いていたころは、極力標準語で授業するよう心がけていました。関西弁でしゃべったら生徒も怖がるんじゃないかなと慮ったわけですが、これが思っていたより難しい。
かつては「西川ほど大阪弁の痕跡を消せる人間は見たことがない」と言われるほど標準語になじんでいたのですが、こちらに戻って十数年たつと、もうだめですねぇ。
特に勢いよく叱るときなどは、つい関西弁が出てしまいます。
高野長英は、たしか「日本語でしゃべったら罰金」というゲームをしていた酒の席で階段から突き落とされたとき、オランダ語で「危ない!」と叫んだそうですが、とても真似できません。
さて。
首都圏の塾生で、何を話しかけてもとりあえず「ニャー」と返事する6年生の男の子がいました。
ぼく「では、◎◎くん」
◎◎「にゃー」
ぼく「きみは『ハイ』と言えないのかい?」
◎◎「にゃー」
ぼく(ちょっとムッとする)「ほんとに?」
◎◎「にゃー」
ぼく(あきらめる)「で、問3の答えは?」
◎◎「ウ」
ぼく「『にゃー』以外のことも言えるじゃないか」
◎◎(うなずいて)「にゃー」
といった調子です。
ある日のこと。授業中板書していると、落ち着きのない◎◎くんが背後で何か意味不明のことをつぶやいている。意味不明というのは文字通り意味不明なのであって、とりあえず日本語ではない。大声ではないけれど、とにかくずっとひとりごとのようにごにょごにょつぶやいている。
『うるせえなこのやろう泣かしてやる』と思って、振り向きざまガツンと叱りつけようとしたのですが、その瞬間『いや待てよ、このまま大阪弁で「おんどれ、ええかげんにせんかい!」などと叫んだらもしかして大変なことになるのでは・・・・・・』と考えてしまったわけです。
しかし、光速で振り返ったその勢いは止められないわけです。どうしたらいいんだ!
で、どういうわけか、思わず、つい、うっかり、
「ニャー!」
と怒鳴りつけてしまう僕なのであった。
『しまった』と思ったときにはもう遅く、すっかり興奮した◎◎くん、『ここにもネコ語を解する人間がいた!』とばかりに、
「にゃにゃにゃ、にゃにゃにゃにゃにゃー!」
とすごい勢いで叫びはじめ、収拾のつかない事態に。
『やってしもうた~』と頭をかかえる僕なのであった。
なつかしい思い出です。
首都圏の塾生諸君、がんばれ~!