どうも雨男くさい
どうも雨男くさいんですよね。
山に行くたびに雨が降ります。確かに山は雨が降りやすいんですけど、ひたすら降られ続けてます。何年前かには、絶対それると思われた台風が沖縄あたりで行きつ戻りつして何だかひどく強引に、無理矢理な感じで長野に襲来したことがありました。もう、狙っているとしか思えませんでしたね。そのとき、私は上高地から前穂高・奥穂高を経由して、穂高岳山荘のテント場で一泊し、翌日西穂高まで縦走しようとしていました。ところが穂高岳山荘に着いたところで情報を収集すると、どうも台風が来るらしいってことで、大慌てで涸沢まで下りました。いったんテントを張ったものの、どうも台風が気になって仕方ないので、撤収してさらに横尾という上高地と同じくらいの標高のところまで下りたんですけど、もう少しでテントを張り終えるというところで雨がじゃーじゃー降り出して、しみじみがっかりしました。
去年、北アルプスの五色ヶ原でテントを張ろうとしたときも、山小屋に着いて申し込みをしようとしたとたんにすごい雨が降り出し、雷もバリバリ鳴って、すっかりやる気を失ってしまいました。その直前にはツキノワグマにばったり遭遇していたこともあり、テントを張るのはやめました。
テント好きです。小学生の頃から憧れていました。いつか僕もテントを背負っていろいろなところに出かけたいと思ってました。で、高校生のときにかなり年上の従兄に古いテントを譲ってもらい、友だちと三人で対馬まで行きました。
この対馬行きは、友だちのお父さんの強硬な反対を乗りこえて実現したものです。「あかんわ、父ちゃんが絶対あかん言うとる」「なんでそんなに反対しとるんや」「わからん」
よくよく聞いてみると、友だちのお父さんは対馬がソ連領だと思ってたんです。要するに、「ちしま」と「つしま」を混同してたんです。誤解がとけるとわりとあっさり許可してくれましたが、僕の母の友人も対馬は沖縄だと思っていたらしいし、とにかく対馬について知らない人が多すぎるのにびっくりしました。対馬にはツシマヤマネコがいるので、イリオモテヤマネコがいる西表島とかんちがいしたのかもしれません。対馬は九州と朝鮮半島のあいだにある島です。釜山が見えます。
そもそも何で対馬に行ったかというと、日本史の先生が対馬のことを激賞したからですね。おもしろい、とか、美人が多い、とか。行ってみたら、たしかにおもしろかったけど、美人よりヤンキー(っぽい人たち)が多かったです。村人の勧めでグランドにテント張ってたら、近くで集会していたヤンキー(っぽい人たち)がわらわらと寄ってきて生きた心地もしませんでした。みんな体もごついし。でも、テントの設営を手伝ってくれました。「俺は大工だ、任せとけ」「俺は鉄工所勤務だ、任せとけ」とか言いながらすごい勢いでペグを地面に打ち込んでくれ、次の日抜くのに苦労しました。おっかなかったけれど、聞いてみたら、中卒の社会人1年目だったりして、実は僕たちの1年下でした。でも明らかにお酒飲んでましたけどね。
ちなみにそこはほんとに村人たちのグランドなので、次の朝、目が覚めたら、テントをぐるりと取り囲んで村人たちがラジオ体操をしており、我々としてはテントから出るに出られず、いたたまれないというかはずかしかったのが良い思い出です。
古い記憶なのでさだかではありませんが、対馬では一滴も雨に降られなかったような気がします。あの頃は雨男じゃなかったんですね。何でこうなってしまったのか。
その後私はかなり無気力な大学生へと変貌し、長いあいだアウトドアから遠ざかることになります(1回だけ丹後半島に行った)。それどころか、山登りしたりキャンプしたりする人のことを「アウトドア小僧」なんて呼んでバカにしていました。すみません。まさかこの歳になってアウトドアおやじになるなんて思ってもみませんでした。雨男になっちゃったのは、アウトドア小僧の人たちをバカにしてきた罰があたったのかもしれません。