国語科講師からのリレーメッセージ②「因幡の白兔」
第2弾は木村trです。
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因幡の白兎
こんにちは。国語科の木村です。皆さん、前回の山下高充先生からのメッセージをもう読みましたか? その中で島根県の「隠岐」という地名が出てきていましたね。「隠岐」は日本に伝わる神話の一つ、「因幡の白兎」の舞台でもあります。今日は「因幡の白兎」について一緒に勉強しましょう。
隠岐島に住んでいた一匹の白兎は、海の向こうの因幡国を見ながら、「柔らかくておいしい草がたくさん生えている因幡国に渡ることができたらなあ」といつも思っていました。ある朝、海から顔を出したたくさんのサメを見て、白兎はいい方法を思いつきました。その方法とは、たくさんのサメを隠岐島から因幡国まで一列に並ばせ、その上を跳んで数を数える、というものでした。これなら念願だった因幡国にたどりつくことができます。さっそく白兎はサメに「あなたたちとわたしたち、どちらの数が多いか、くらべようではないか!」と持ちかけました。翌朝、サメはたくさんの仲間を集め、約束通り、隠岐島から因幡国まで仲間を並べました。もちろん白兎は数比べをする気などはじめからありません。サメの背中をぴょんぴょん跳んでいきます。あともう少しで因幡国というところで、白兎はつい得意になって、「おいらの夢は因幡国に行くことだったんだ。それでおまえたちを飛び石代わりにさせてもらったってわけさ。へへへ!」それを聞いたサメはだまされたと知って怒り、仲間たち一緒に白兎を襲い、白兎の皮を剥いでしまいました。
毛皮を剥がされて痛くて泣いている白兎(自業自得ではありますが)は、因幡国にいる「八上姫(やかみひめ)」に求婚をしに行くところだった、神様の兄弟(「八十神」)に出会います。この兄弟は白兎に「海水を浴びるんだ。そして、山のてっぺんで風とおひさまの光を浴びていれば治る!」と言いました。もちろん、こんなことをしても治るわけはありません。兄弟は面白がって嘘を教えたのです。白兎は兄弟の言葉を信じてやってみましたが、痛みはひどくなる一方です。兄弟は白兎をそのままにして八上姫のところへ行ってしまいました。
と、そこへ先程の八十神の荷物を担がされている「大国主(おおくにぬし)」という神様がやってきました。白兎から今までの話を聞いた大国主は、白兎をかわいそうに思い、「きれいな水で体を洗い、ガマの穂をつけて休みなさい」と教えてあげました。言う通りにするとみるみるうちに白兎の傷は癒えていきました。感激した白兎は、「あなたさまこそが八上姫の婿になるべきお方です。あのいじわるな兄神さまたち(なんと先程の兄弟は大国主の兄たちでした)には八上姫をもらい受けることなどできません!」と伝えます。 その後、八上姫のもとについた兄神たちが求婚しますが八上姫は相手にしません。遅れてやってきた大国主の姿をみると「荷物を持っているあなたの妻にしてください」と言い、白兎の言った通り、二人は結ばれたのです。
この神話は色々なことを私たちに教えてくれていますが、今日皆さんにお伝えしたいのは「自分のしたことは自分に返ってくる」ということです。白兎は、最後の最後で調子に乗っていらぬことを言ってしまったがために皮を剥がれ、痛い目にあいました。白兎にいじわるをし、大国主に荷物を持たせた八十神は、八上姫と結ばれませんでした。一方、兄弟たちの荷物を背負わされながらも困っている白兎を助けてあげた大国主は、八上姫と結ばれました。
やはりどういう状況にあっても大国主のように他人を思いやる心を忘れることがないようにしていきたいですね。新型ウイルスによる感染症の拡大を防ぐために「三密(密閉・密集・密接)を避ける」ということが言われていますが、これも自分の身を守るという意味合いはもちろんですが、他人への思いやりが形になったものとも言えるのではないでしょうか。