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2014年9月 4日 (木)

山に持ってく本

山にどんな本を持って行くか? これは非常にデリケートかつ重大な問題であります。

読み始めたが最後もう目が離せなくなって読み終わるまで眠れない、というような本はダメです。山登りのときは早出早着が原則なので、だいたい18時か19時には眠り、午前3時頃起きてごそごそしはじめ、まだ暗いうちに出発するものなんです。遅くとも15時までには山小屋あるいはテント場に到着せねばなりません。だから、夜更かしして睡眠不足になりかねない本はいけません。そもそも僕は山に4泊ぐらいすることが多いので、1日目で読み終わってしまったら困ります。

以前、冬の比良(滋賀の湖西にある山系です)に登ったとき、ポール・オースターの何だったかな、『孤独の発明』だったか『ミスター・ヴァーティゴ』だったか持って行ったらおもしろくておもしろくて全然眠れず、次の日しんどかったおぼえがあります。ああいうのはいけません。

かといって、つまらない本は持って行く意味がない。結局読まないから。

怖い本もダメです。怖がりだから。昔、山ではありませんが、旅行に(前職を辞めたときに、ウイグル、つまりシルクロード方面に行ったんです)島田荘司の『暗闇坂の人食いの木』を持って行ったら怖くて怖くて、ホテルの部屋でひとり眠るのが苦痛でした。それでバーでお酒ばかり飲んでいました。恥ずかしながら、高いところだけじゃなくてオカルト系も苦手です。大学生の頃、お化け屋敷に入ってパニックを起こしたことがありますからね。

ウイグルには2週間近く滞在したので、他の本も用意してました。『暗闇坂の人食いの木』とはえらいちがいますが、旧約聖書の『ヨブ記』を携帯しておりました。でも、バスや列車に乗って『ヨブ記』をひらくと、すぐに眠くなりました。おもしろくないわけじゃないんですけど、

この時、主はつむじ風の中からヨブに答えられた、「無知の言葉をもって、 神の計りごとを暗くするこの者はだれか。あなたは腰に帯して、男らしくせよ。 わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。わたしが地の基をすえた時、どこにいたか。 もしあなたが知っているなら言え。 あなたがもし知っているなら、 だれがその度量を定めたか。 だれが測りなわを地の上に張ったか。 その土台は何の上に置かれたか。 その隅の石はだれがすえたか。 かの時には明けの星は相共に歌い、 神の子たちはみな喜び呼ばわった。海の水が流れいで、胎内からわき出たとき、 だれが戸をもって、これを閉じこめたか。・・・・・・・・」

てな感じでずっと続くわけです。これは、ヨブを襲った不幸に関連して、ヨブと友人たちが議論をしていると神の声がヨブたちを糾弾する、というかっこいい場面なんですけど、でも、ずっとこの調子でつづくと、ヨブには申し訳ないけどどうしても眠くなります。

そういえば、カシュガルでバスを待っていたら、白人の若い女性がヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を読んでいて何だか格好良かったな~。すげえ、洋書読んでる、みたいな。

ヨブ記の良いところは、薄いところですね。ズボンの尻ポッケにすっと入ります。大学時代、寮で一緒だったTくんは、「旅に出るときは、文庫本を半分にちぎってポケットに入れて持って行くよ」なんて言ってました。「残りの半分はどうするんだい?」

「次の旅に持って行くのさ」

気障なやつでした。

さて。先日、またしても山登りに行ってしまった私ですが、このときの本の選択は、考えに考え抜いたあげく、白川静の『孔子伝』! これが大正解でした。適度におもしろく、適度に眠い!分量的にもちょうど良く、帰阪した翌日にちょうど読み終わるというジャストフィットぶり。『孔子伝』は、酒見賢一さんの超絶おもしろい『陋巷にあり』という長編小説の世界観に多大な影響をあたえた本でありまして、『陋巷にあり』にかつてめちゃくちゃはまっていた僕にはうってつけでした。この小説は、孔子とその弟子の顔回(「一を聞いて十を知る」と言われた俊秀ですね)が主人公のファンタジー歴史小説とでもいった趣の話なんですが、13巻まであって、読み応えも十分です。受験生諸君は中学生になったらぜひ読んでほしいですね。文庫本も出ています。でも山に持って行ったらダメですね。眠れません。

今回行った山は、なんと、またしても剱岳であります。もう4回目です。剱岳と富山が大好きです。しかし、山登りあるいは心から愛する富山市新富町のことを書いている時間的余裕はなくなってしまいました。この話はまた今度にしましょう。っていうか、その前に、灘コースの合宿について書こうと思っていたんですけど、なかなか・・・・・・。

すべてはまた今度!

 

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