場外乱闘④
ついに完結!
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「初夏の旅なつかしく ④」
山口市をあとにしたのですが、折角なのでどうしても立ち寄りたいところがありました。JR山口駅の隣駅、帰路とは反対側です。今や無人駅ですが、その名も矢原駅。読み方は「やばらえき」ですが、そこは漢字表記なので大丈夫。券売機で入場券を購入。ちゃんと矢原と書いてあります。駅名標の前で記念撮影してミッション完了。
いよいよ最後の目的地、山口県の東の端、岩国市を目指します。広島市が県の西の方にあるので広島観光のついでに訪れる方も多いそうです。
「錦帯橋」
城山を映す川には五連のアーチ
岩国のシンボル たくみの技よ
白鷺舞い降り 釣りする人いて
豊かな川には 人と自然と
岩国といえば錦帯橋です。長崎の眼鏡橋・東京の日本橋とで日本三名橋だそうですが、錦川にかかるその姿はスケールの点でも美しさの点でも群を抜いています。川の向こうの小山の上に岩国城が見えます。芸術的な反りを見せる五連のアーチは匠の技なる工芸品。向こう岸まで往復してから川原に下りると、これまた最高の眺めです。傾きかけた陽にきらめく川面。澄んだ水が豊かで鮎釣りだろうか釣り人がいます。どこかから白鷺が飛んできて舞い降りました。度重なる洪水に苦しんだ江戸時代、流されない橋を願って造られた錦帯橋。今は観光地ですが元々は暮らしと自然の中に生まれた橋なのです。
「希代の剣豪」
錦川にて ツバメを斬りて
長刀の腕を磨きし 小次郎
創作にしても さもありなん
見渡す川原に 栄達夢見て
橋の向こう岸の柳の木のそばに立て札がありました。「巌流ゆかりの柳」と書いてあります。吉川英治は小説「宮本武蔵」のなかで佐々木小次郎を岩国生まれとし、錦帯橋のたもとで柳とつばめ相手に長刀を振って険の技を磨き、つばめ返しの技を編み出したと記しました。錦帯橋の建造は巌流島の決闘より数十年もあとなので、それらは吉川英治の創作です。でも名作の味わいは色あせません。巌流島は関門海峡にあります。前日の朝、下関で武蔵と小次郎の対決をかたどった銅像を見かけました。図らずも旅の始まりと終わりが見事に重なりました。
往路と同じく高速道路をビュンと帰ります。家についてひと風呂浴びたら、あちこちの土産物屋で買った魚の練り物やらご飯物やらで晩ご飯。車で巡る旅のラストは外食よりもこのスタイルが気に入っています。さてさてメインは例のサザエ。刺身と壺焼きでいただきます。お店の大将の言葉通り、夜でもまだ生きていました。刺身は新鮮、壺焼きの醤油は香ばしく。旅先の風情をもう一度味わうのが旅の〆ご飯なのです。
長々とお付き合いありがとうございました。ステイホームを余儀なくされていますが、困ったこと、マイナス面は対応次第でプラスに転じます。たっぷりある時間は読書をする絶好の機会です。大人用の映画に挑戦するのもよいことです。アニメではなく、SFとかではなく、実写の人間ドラマです。昔ながらの名作もよいでしょう。気分転換と、疑似体験による国語力の土台作り。まさに一石二鳥ですよ。