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2010年2月16日 (火)

雑感①

塾講師になって17年ほどになりますが、新年度が開講し、初めてのクラスで授業をするときはどうしても緊張します。

数々の苦い経験から学んだ教訓は、「ぼくの上質なユーモアセンスでがっちりハートをつかむぜ」的なお子様ランチな発想は厳に慎まねばならないということです。この教訓を忘れると、教室のなかで寒々とした孤独を感じることになるかもしれません。

「ふつうに」やるのがいちばんです。いつもどおりやること。

ここ数年は、初めてのクラスであっても自己紹介もしません。いきなり授業に入ります。

相手が小3や小4だったら、今でも自己紹介ぐらいするかもしれません。以前はよく自己紹介で遊んでいました。子どもたちって、「下の名前」とか年齢を知りたがるんですよね。

子「先生、下の名前なに?」

僕「名札にちゃんと書いてあるやん」

子「書いてへんで」

僕「よう見てみい」

子「『西川』しか書いてへんやん」

僕「『西』が名字で『川』が名前やがな」

子「うそや」

僕「ほんまや」

子「ほんなら西先生や」

僕「フルネームで呼んでくれな返事せえへん」

子「わがままや」

僕「しかも、『西川先生』とちゃうで。『西・川先生』やで」

しばらくは子どもたちもがんばって「西・川先生」などと言っていますが、いくらノリがいい小3・小4生とはいえ、そのうちめんどくさくなってやめてしまいます。

すぐにムキになるのも、小3・小4生の特徴です。以下は小4相手の休み時間中の会話。

僕「今までだまってたけど、先生ほんまはペンギンなんや」

子「うそや」

僕「ほんまや。これ人間のぬいぐるみやねん。チャックおろしたらペンギンが出てくるねん」

子(ムキになる)「ぜったいウソや!」

僕(ウソに決まってるやんけと思いつつ)「先生がみんなにウソついたこと」

子「ありまくりや」「ていうかウソしか言わん」

僕「そうやったかなあ」

子「ほんまやったら証拠見せろ」「ぬいぐるみ脱げ」

僕「うんしょ、うんしょ、あかん、チャックに手が届けへん」

子「ぜったいウソや!!」

このように「ぜったいウソや」とムキになって叫びつづけるのは男の子ですね。女の子はうふふと笑っていることが多いです。

また別の日。

僕「今までだまってたけど、先生ほんまは天使なんや」

子「ウソや!」「っていうか、この前ペンギンや言うてたやん」

僕「ペンギンかつ天使なんや。『ペンジェル』と呼んでくれ」

子「もうええって」

人間ひとりひとりに個性があるように、クラスにも個性があります。同じ教室のたとえば同じNPクラスであっても、毎年雰囲気がまるで異なります。

ときどき、鉄板だと信じてきた冗談が全然うけないクラスがあります。そういうクラスでは、冗談に限らず、我ながらなんてわかりやすい解説なんだろうと思ってしゃべっているのに子どもたちの表情がまったく変わらなかったりします。

これは落ち込みます。

俺ってなんて授業が下手なんだろう、いつまでも駄目だな。街を離れて一か月くらい山登りにでも行こう。でも戻ってきたらクビになってるな。なんて考えたりして。

ところが、そのクラスでアンケートをとってみると、なぜかとても数字が良かったりするわけです。相変わらず冗談は滑り続けています。発問してもあまり手は上がりません。

あれはいったい何なんでしょう?

そういうクラス、としか言いようがないんですが、たぶん心の中ではくすくす笑っているし、なるほどと思っているんだけれど、それをあまり顔に出さない、そういう個性のクラスなんでしょうね。

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