« 淀川河川敷散歩Ⅱ | メイン | 昭和は遠くなりにけり »

2015年3月21日 (土)

またまた名前であそぶ

ペンネームであそぶのは、やはり推理作家が好きなようです。「佐賀潜」とか「嵯峨島昭」とかふざけた名前にしたり、「厚川昌男」のアナグラムで「泡坂妻夫」にしたり、というのも推理作家です。推理作家ではありませんが、色川武大が『麻雀放浪記』を書くときは、阿佐田哲也の名前にしていました。これは当然「朝だ、徹夜」の洒落です。

「二つ名」ということばもありますが、これがまたわかりにくい。本名以外の呼び名のことだと説明している辞書もあります。通称とかあだ名が一般的ですが、コードネームとか源氏名なども含まれそうです。ところが、そのものの特徴や性質をちょっと「文学的」に表した言い回しを「二つ名」と言うこともあります。「尾張の大うつけ」とか「東海一の弓取り」とか「越後の龍」「甲斐の虎」のように。織田信長、今川義元、上杉謙信、武田信玄を表していますが、通称やあだ名とはニュアンスがちがいます。「犬公方」は微妙かな。「…の…」のパターンでは「東洋の魔女」とか「フジヤマのトビウオ」とかいうのもありました。うーん、古すぎ。

でも、こういうのとはまたちがった「二つ名」というのもあります。「鬼平犯科帳」に出てくる盗賊などで、本当の名前の上にくっつける「呼び名」みたいなのがありますよね。夜兎の角右衛門とか狐火の勇五郎とか、風車の弥七とか、これは「水戸黄門」ですが。これ、ちょっとかっこいいですよね。旭将軍義仲とか独眼竜政宗というのも、これに近いようですが、「旭将軍」「独眼竜」のように単独でも使います。やはり、「○○の」という形ですね。「マムシの道三」は入れてもよいかなあ。「アホの坂田」はかっこよくないですね。このあたりになるともはや枕詞になってきます。「清洲の甚五郎」とか「生駒の仙右衛門」とか、これは地名ですかね。侠客の「清水の次郎長」「吉良の仁吉」は明らかに地名ですな。これは名字とはちがうのかなあ?

貴族はほとんどが藤原氏なので、屋敷のある地名で呼んだのですね。今でも親戚同士を区別するときに地名を使うことがあります。「名古屋はまだ来ないか」のように。こういうのが名字になっていったのでしょう。足利荘に住んでいる源氏だから足利の源尊氏、ちぢめて足利尊氏であり、新田荘なら新田義貞になります。たまに県名と同じ名字の人がいますが、県名も小さな土地の名前が代表として名付けられたことが多いので、そういう名字の人がいるのも当然でしょう。もちろん、さすがに北海道という名字の人はいませんし、「北海」でもなさそうです。東北では秋田、福島は名字としてよく見ます。「福島」は「くしま」と読むこともあります。地黄八幡北条綱成はもとは「くしま」と読む「福島」姓でした。青森、岩手という名字はあまり見ません。山形は多くはないけれどいますね。「山県」「山縣」と書くとまたちがうルーツになるのでしょう。宮城も少ないようですが、宮城道雄さんがいます。

関東地方は名字になりにくそうですね。東京は当然でしょう。人工的な名前で由緒ある地名ではありません。東京ぼん太という人がいましたが、芸名です。神奈川もなさそうだし、群馬、埼玉も聞いたことがありません。栃木は小学校の同級生にいました。茨城は少ないでしょう。茨木なら結構います。関東ではやはり千葉がとびぬけて多そうです。中部地方では石川、福井、長野はよく聞きます。富山は「とみやま」と読むことが多いでしょうね。新潟はなさそうです。静岡、山梨もなさそうだし、岐阜も人工的地名なのでいないでしょう。愛知は愛知揆一がいるので、ゼロではありません。 近畿も京都はいません。大阪は大坂ならいるでしょうが、大阪ではどうでしょうか。奈良は意外にいるような気がします。滋賀、和歌山は志賀、若山になるとかなりいますが、どうでしょうか。兵庫、三重はゼロに近そうです。四国は香川が多いけれど、徳島は少なそうです。愛媛、高知となるとやはりゼロに近いでしょう。中国地方は山口が全国ベスト30には入るレベルの多さですが、岡山、広島はぐっと少なくなるし、鳥取、島根は聞いたことがありません。九州は福岡、長崎、宮崎がそこそこ多く、熊本もいるでしょう。佐賀もいなくはなさそうですが、大分、鹿児島はどうかなあ。沖縄はまあいないでしょうね。旧国名で見ていくのもおもしろそうですが、ちょっと飽きたので、また今度。

外国人の名字も地名から来ているのでしょうか。大工のカーペンターなんてのがあります。スミスが鍛冶屋であり、ミラーが粉屋、テイラーが仕立屋というように、職業が名字になっているのが多そうです。ドイツに行くと、シュミット、ミュラー、シュナイダーですね。シェイクスピアなんてのは、「槍を振る」という意味ですから、何なのでしょうね、これは。日本で言えば「剣持さん」ですかね。スチーブン・キングなんてのは「王様」と関係あるのかなあ。トルーマンは先祖が正直だったのか、ワイルドはスギちゃんみたいな先祖なのか。アームストロングは腕っぷしが強かったんでしょうね。ブラウンは何が茶色だったのでしょうか。肌の色か髪の毛か。ヤングというのは、どの時点で名字になったのでしょうか。本人が年取っていたらオールドだったはずです。リンカーンはアメリカの町の名でもありますが、調べてみたら、これは大統領の名にちなんでつけられたとか。ところが、イギリスにもリンカーンという地名があり、「ケルト語起源のLindo(池)にラテン語のcolonia(植民地)がついたもの」と書いてありました。ということはリンカーンは地名からきた名字ですね。

マクドナルドのように「ドナルドの子」というパターンは、マッキントッシュ、マッカーサー、マッケンロー、マッケンジー、マコーミックのような、スコットランド・アイルランド系によくあります。ジャクソンのように、あとに「ソン」がつくものもあります。ジョンソン、ダビッドソン、ウィルソン、アンダーソンも「ジャックの子」パターンですね。アンデルセンの「セン」も同じでしょう。ウィリアムズ、ジョーンズ、デイビスなどの「~ズ(ス)」やオニール、オブライエンの「オ~」も「子供」という意味のようです。父親のファーストネームを名字にすることも結構あったようですね。ナポレオン・ボナパルトの甥がルイ・ナポレオンになっているのはそういう理由でしょうか。ケネディとかチャーチルは姓で呼びますが、ナポレオンは皇帝なので名で呼ぶのでしょう。フランスの王様がルイ何世とか呼ばれるように。そうすると、ナポレオンの血を継いでいるということで、甥は「ナポレオン王朝」の「ルイ」となったのかもしれません。山田ルイ53世はまったく血のつながりはありません。どうしているのかなあ、髭男爵。ルネッサーンス!

このブログについて

  • 希学園国語科講師によるブログです。
  • このブログの主な投稿者
    無題ドキュメント
    【名前】 西川 和人(国語科主管)
    【趣味】 なし

    【名前】 矢原 宏昭
    【趣味】 検討中

    【名前】 山下 正明
    【趣味】 読書

    【名前】 栗原 宣弘
    【趣味】 将棋

リンク