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2017年6月11日 (日)

六甲山から見える夜の夜景について~トミー・スマイリー試論~

トミー・スマイリーといえば希学園国語科では知らぬ者とてないナイス・ガイです。トミー・スマイリーという芸名はもちろん私が勝手に付けたもので、いつも口元が緩んで何かうれしそうにニマニマしているように見えることと、須磨に住んでいることとをかけて「スマイリー」、「トミー」は言わずもがなというか、まあそのまんまですね。

はじめて出会った頃から私はトミー・スマイリーに注目していましたが、それは彼が天下の名門灘校卒だからではなく、、不注意かつ不用意、何とも言えずうかつな人物だからです。彼の名がメイ・デーの『インターナショナル』のように国語科の中に轟きわたったのは、忘れもしない豊中教室で授業前に彼が「いやあ、ぼくが昔、彼女と六甲山に夜の夜景を見に行ったとき・・・・・・」とのたまったときでありました。

「夜の夜景!?」

これはいわゆる重複表現、「馬から落馬する」「骨を骨折する」「ピッチャー第一球目投げました」「違和感を感じる」のより壮絶なバージョンではなかろうか? 文章というのは冗長度があまり低いと理解しづらくなるものなので、ある程度の重複表現はしかたないというか、あってもいいと思うわけですが(「まるで雪のように白い」なんて言い方も重複をふくんでいると見ることができますよね)、それにしても「夜の夜景」はひどい。安倍首相が言ったとされる「諸君たち」とどっこいどっこい、あるいはもっと拙劣かもしれません。

そのとき、トミー・スマイリーの人生はたしかに変わったのでした。以来、つねに彼の背後ではひそひそと声がするようになりました。

「灘校?」「うそでしょ?」「だって」「え?」「夜の夜景?」「朝のモーニングコーヒー?」「お昼のランチ?」

疑惑をいつまでも疑惑のままにしていてはいけないと思い、私は本人に確認することにしました。

「ヘイ、トミー。君が灘校卒っていうのはほんとうかい?」

「ホワッツ?」

その後彼は疑いを晴らすべく、在校中の学生証(であると彼が言い張る物体)をみんなに見せびらかしたり、住吉近辺のおいしいラーメン屋について語ったり、灘校の先生の名前をいかにも知ったげに話に織り交ぜたりと、涙ぐましい努力をしていたのですが、ある日、決定的な出来事が起こってしまったのです。

文化祭見学で灘中学校に塾生を引率したときのこと、任務を終え、私はひとり住吉川をぶらぶらと散歩しておりました。私はふと、奇妙なことに気づきました。住吉川はJR住吉駅と灘校のあいだを、北から南へと流れています。私は灘校に来るときはいつも大阪方面から電車で住吉駅に着き、東へと引き返すようなかっこうで灘校まで来ます。しかし、電車から住吉川を見た記憶がまったくないのです。これはどういうことか? 答えは簡単でありまして、住吉川はJRの線路の上を流れているから、電車から見ることはできないわけです。川底がどんどん高くなっていく、いわゆる天井川というやつですね。何だか不思議です。

この話をしたら、トミー・スマイリー氏はきょとんとし、

「え? まじですか?」

「知らなかったのかい?」

「はあ」

「灘校卒なのに?」

「いや、まあ」

「ほんとに灘校?」

というわけで、疑惑は深まって今に至っているわけです。

「良いイメージはすぐに底をつく貯蓄のようなもの、悪いイメージはいつまでも返しきれない借金のようなもの」というのは今考えた私の名言ですが、トミー・スマイリーがこの借金を完済できる日は果たして来るのでしょうか?

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