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2010年3月21日 (日)

合格祝賀会

昨日、第18期生の合格祝賀会が行われました。

我々講師のこの日の主たる業務は、劇への出演です。

この日のため、全員三國連太郎なみに台本を五千回読み、稽古を積んできました。

しかしいかんせん素人ばかりなので、なんともいえず大根。まずまずいけてるなと思えるのは、私以外はせいぜい能勢先生ぐらいですか。

期待はずれだったのは、ミュージカル好き理科の藤原先生ですね。自分でも言ってましたが、彼女はボケた人なので、ツッコミにはむいてないのでしょう。控え室前の廊下で不肖この私が蜷川幸雄と化してさんざん助言を与えたにもかかわらず、やたらとテンションが高いわりには、「打てば響く」感がなくてねェ。やれやれです。

理科の奥村・三倉コンピは例年どおり漫才を披露したわけですが、奥村先生の台本の完成が祝賀会前夜で、当日の朝まで練習していたとのことです。

奥村先生はまあ自業自得というんですかなんとかの横好きっていうんですか趣味でやってるわけだからいいでしょうよ。言ってみれば幸せ者です。毎年毎年M―1に挑戦しつづけて、はじめのうちこそみんなにがんばれよなんて言われていたものの、最近はすっかり話題にものぼらなくなり、たまに「へえ、まだやってるんだ」とティッシュを丸めて捨てるみたいな言われ方をされるだけになっても諦めきれずに(というか意固地になって)チャレンジしつづけているような人ですから。

かわいそうなのが三倉先生です。毎年祝賀会当日は睡眠不足でふらふらです。「もう寝ないとだめだ・・・・・・」とつぶやきながら漂うように歩いていましたよ。

しかし、さっきから、名前が出てきているの理科講師ばかりですね。

なぜだ?

ま、とにかく祝賀会も終わり、いよいよほんとうに第18期生をおくりだすことができました。

   *

入試が済んで二か月近くたってこの祝賀会を行うわけですが、我々講師にとっても祝賀会は決意を新たにする場です。

久しぶりに子どもたちに会い笑顔を見て単純にうれしかったのはもちろんですが、その一方で、たとえば今日こうやって昨日のことを思い出しながら考えてしまうのは、塾生全員を第1志望の学校に合格させてあげることはできなかったな、ということです。

ほんとうに僕たちにとってそれがいちばんの夢です。どの学校に何人通すということではありません。チラシやポスターに何とかいてあるかは関係ありません。

僕は6年ほど前に希学園に転職してきましたが、そのときびっくりしたことのひとつに、合格発表の現場に講師が居合わせる、ということがあります。僕は希学園に来た年からずっと①Nコースを担当しているので、灘の発表の日は、半日、あの体育館で過ごします。

前の塾ではそういうことはありませんでした。保護者や塾生に顔を知られていない者がこっそり見に行って、合否を確認するだけです(そうやってすぐに数を確認しているわりには実績の発表はすごく遅い。問い合わせがあったら「今集計中です」と言っておけという指示が毎年出されていました)。

ほんとうに合格発表の日は、一年のうちで最も緊張し、気が重い日です。

番号のなかった子をうながして事務所まで点数をもらいに行き(灘中は受験者に点数を教えてくれます)、繰り上げ合格がきそうな点数かどうかをいっしょに見るんです。もちろん、合格できなかった子や保護者の方の無念さにくらべると、我々の心苦しさなど何ほどのものでもないのでしょうけれど・・・・・・。

   *

もう何年も前の話ですが、合格確実だと思われていた子が不合格になってしまったときのこと(残念ながらそういうことは時折経験します)を思い出します。

その子は発表を自分で見には来なかったのだったかどうだったか、いずれにせよ、その場でその子に会うことができず、家に電話をかけました。灘の発表の日、ということは洛南の入試の日で、つまりまだ行くべき学校が確保できていない状況ですから、その次の日も別の学校の入学試験を受けなければいけないわけです。

何と言って慰め励ましたらいいのか、頭の中でいろいろな言葉が(どれもぴったりこない)ぐるぐるまわっている状態で体育館の横のだれもいないところに行って電話をかけました。

保護者の方と今後の予定を簡単に話したあとで本人にかわっていただいたんですが・・・・・・。

電話に出てきたその子が、

「すみませんでした」

と言ったんです。

ちょっとまいりました。

講師が泣いてはいけない、あるいはむしろ泣く資格はないと思っているんですが、そのときはちょっとだめで、しばらく声が出ませんでした。

   *

だからやはり、絶対に合格させなければいけないんです。

もちろん、全員合格させるなんてほんとうに可能だと思っているのか、口だけならなんとでも言えるぞ、と問い詰められれば、うまく言い返せないかもしれませんが、でも、少なくともそういうことを、合格発表の場にいつづけて子どもたちといっしょに喜んだり悲しんだりしていないよその塾の講師には言われたくありません(言われたことないですけどね)。

というわけで、来年の入試に向けて、みんな決意を新たにしているところです。

新6年の塾生諸君、がんばろね。

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