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2020年4月18日 (土)

国語科講師からのリレーメッセージ⑤「音楽は世界だ」

さあ、第5弾は、「今年中に〇せます」「来年の合格祝賀会までにはや〇てみせます」「やせ〇と言ったら〇せるんだ!」と言い続けてはや5年、まったくその兆候のない「や〇る〇せる詐欺」の花崎先生です。

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外に出る機会が減ってしまっている昨今、みなさんどうお過ごしでしょうか。

数ある唱歌の中でもぼくが一番好きなのはまさに竹見先生と角谷先生が紹介していた「朧月夜」なんですが、小学生のみなさんの中には歌を聴いただけでは情景が浮かんでこない、ピンと来ない、という人も多いんじゃないでしょうか。ぼく自身、小学生だった当時はこういった唱歌の魅力や味わいは、わかりませんでした。「朧月夜」で歌われているような情景は都会には全く残っていませんし、無理もありませんよね。でも、曲を聴いているとなんとなく「懐かしさ」や「静かな夜の空気」のようなものを感じませんか?また、もっと小さいころに歌詞の意味もわからずに歌っていた「お気に入りのうた」などはありませんか?

「酒と音楽を持たない民族はいない」と言われるほど、大昔から人間はどの時代どの地域でも、音楽に親しんでいます。「ことば」がまだ無い時代から音楽がコミュニケーションのひとつの手段だったのだろうと思うのですが、なにぶん形の残りにくい文化なので、原初の音楽というものは資料がほとんど残っていません。ただ、不思議なことに音楽から「感じるもの」は、どうやら全人類に共通するところがあるようです。

例えば、映画「ジョーズ」のテーマ曲を聴くと誰でも「迫り来る恐怖」を感じますし、「ゴジラ」の登場シーンで流れる曲を聴くと、日本人でなくとも「不気味さ」を感じるそうです。放課後に「遠き山に日は落ちて(家路)」が流れると、なぜか「早くお家に帰りたい!」という気持ちになりますし、「蛍の光」を聴くと「別れの寂しさ」のようなものを感じます。

でも実は「遠き山に~」はロシアの作曲家ドヴォルザークが新世界(アメリカ)に渡った後に作曲した「新世界より」に堀内敬三が歌詞をつけたものですし、「蛍の光」はもともとスコットランド(イギリス)の民謡で、「晋書」と「書学記」という中国の古典から生まれた「蛍雪の功」という故事成語を元に国学者稲垣千穎が歌詞をつけたものです。

なぜ、こういった外国ルーツの音楽が日本人のぼくたちを感動させるんでしょうか。

 その秘密の一端は、メロディーを作る「音階」にもあるようです。「音階」というのはドレミファソラシド♪と、階段のように順に登っていく音の並びですね。

実は「朧月夜」も「蛍の光」も、日本で昔から親しまれている「ヨナ抜き音階」でできているんです。「ヨナ」は「4と7」、ドから数えて4番目と7番目に当たるファとシの音を抜いた5音でできている音階で、地域ごとに少しずつ形が違うものの、世界中でこの「五音音階(西洋音楽ではペンタトニックスケールと呼ばれます)」が、古くからメロディーの基本として存在しているんです。日本で今も親しまれている唱歌も演歌も、多くがそうです。よくわからん、という人はピアニカでも何でもいいので「ミレドラソラドレミレ・ド♪」と弾いてみましょう。お家の人が歌詞をつけて歌ってくれるはず。 

他に例えば、「ヨナ」ではなく「ニロ(2と6)」つまり「レとラ」を抜くと沖縄の音階になります。THE BOOMの「島唄」や、仙台育英高校が甲子園で応援歌として使ったことで話題になった「ダイナミック琉球」なんかもベースはこれですね。近年ヒットしたポップスでは「逃げ恥」のテーマソングだった星野源の「恋」やAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」、は「ヨナ抜き」です。DA PUMPの「USA」は、…これは違いますね。このあたり、個人的にはあまりよくない思い出が…いや、いかんいかん、なんでもない。正明先生ありがとうございます。

今年の合格祝賀会での披露が幻となってしまった、米津玄師の「パプリカ」もヨナ抜きですね。ところどころわざと外れた音を「つかみ」に使っているあたり、この人は天才なのかも。

洋楽だと、クリーム(バンド名です)時代のエリック・クラプトンはペンタトニックスケールに「ソ♭」を足したブルーススケールだけで、かっこいいソロをたくさん弾いています。

ジャズやR&B、そこから派生したロックも含めてルーツとなったのは黒人音楽なんですが、アメリカの南部に奴隷として連れてこられた黒人に白人がペンタトニックスケールを教えたら、黒人たちは独特の節回しで哀愁漂う歌をうたうようになった…というのがブルースの始まりだそうです。このあたりのエピソードは典拠がよくわからないので本当かどうか。最近は八代亜紀がよくジャズを歌っています。演歌の小節(こぶし)にはジャズヴォーカルにも通じるところがあるんだろうなぁ、と感じました。ちょっとサラ・ヴォーンみたい…と言ったらジャズファンが怒りそうですが。美空ひばりもジャズのスタンダードを歌っていたそうですね。

最近ではファレル・ウィリアムスの「HAPPY」もペンタトニックです。ホンダのフリードのCMで流れる曲です。

 

これだけいろいろなところで共通点をもつ音楽が作られ、時代も国も超えて人の心に訴えかけるって、やはり不思議な力ですね。「言語」というものが何かしらの「意味」を伝えるツールであるとすれば、音楽は唯一の「人類共通言語」と言えるのかもしれませんね。

そろそろ話が長くなりすぎたので、最後にクイズ。

『ちゃらり~~♪ 鼻から牛乳~♪』

 ↑これの作曲者は、次のうち誰でしょう?

  1. バッハ
  2. ブラームス
  3. ベートーベン
  4. 嘉門達夫

学校や塾で学ぶことはいろいろな形で皆さんの人生を豊かにしてくれると思いますが、「受験のため」「進学のため」には必要とされないスポーツや芸術も、「人生を豊かにする」という点では貴重なものです。

今回紹介した音楽に興味がわいた人はぜひ、聴いてみてくださいね。

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